「は…っ、やるじゃねぇか…鉢屋」
「…先輩こそ、」
五年対六年の裏裏裏山で行われているこの実習は今日で五日目に突入する。木々を駆け、苦無を交わして、避けて。学年が上がるにつれ本格的な実戦に入るので軽く殺し合い状態だ。
「でも…避けてばっかじゃ僕達には勝てないよ」
「解ってますよ」
食満先輩の放った手裏剣をどうにか避けて物陰に隠れて戦況を伺う。五年は、ほぼ全滅に近い。ハチや勘右衛門はまだ辛うじて抵抗しているようだが、兵助は先程の立花先輩の一撃で先生方に戦力外通告された。雷蔵は中在家先輩によって木に凭たれ気を失っている。なので私の前には食満先輩、善法寺先輩、少し前に来た立花先輩が立ち塞がる。七松先輩がいないことが幸いか。
「出て来い鉢屋、そこに居るのは分かっているのだぞ」
「…」
「一度その生意気な顔を歪めせてみたかったんだ」
――――…来る!
ヒュンッと風を切り私の顔の真横に刺さったのは立花先輩の苦無でも食満先輩の手裏剣でも善法寺先輩の棒手裏剣でもなく、中在家先輩の縄標だった。…ハチもやられたのか。このままじゃ勘右衛門がやられるのも時間の問題だ。六年多勢に一人はきつい。
「…冷静だな」
上から声が聞こえハッと顔を上げると目の前に中在家先輩が詰めていた。くそ。考え過ぎたか。
「どうすればお前は本気を出す」
振り返れば食満先輩。
「五年の誰かを再起不能にすれば本気を出すのか?」
右には立花先輩。
「ナメないでね、僕らを」
左には善法寺先輩。
―――――― 囲まれた。
「ナメてなんていませんよ…っ」
懐から煙幕弾を出して投げつける。一瞬の隙を突いて大地を蹴り木へ上がった。気休めにしかならないだろうけど、やらずに負けるよりましだ。懐に手を突っ込んでお目当ての忍具を取り出す。あまり…得意な物ではないけれど。一か八か、勝負といこうではないか。
少し北へ行った所に先週、四年が使っていた実習場がある。こんな山奥には低学年は来ないのでトラップ等は防犯の為にそのままになっているはずだ。と言うことは、綾部の掘った穴がそこかしこにあるだろう。善法寺先輩ならきっと落ちてくれる。出来れば食満先輩も巻き込まれてくれたら万々歳なんだが。他の先輩方はこれで。右に持った物を強く握った。
思ったら即、行動に移すのに限る。気づかれないように木の上を駆けて北へと向かう。四人が追い掛けてくる気配はまだないけれど、いずれ気付かれる。それまでに。
ああ、もう本当に勘弁してくれ!
これって弱い者虐めじゃないんですか?違うんですか?肉体的にキツイのは仕方ないですけど本当に精神的にもキツイんですって。ねえ分かってますか?トラウマもんですよコレ。笑い事じゃありませんよ。神経図太いか馬鹿じゃないとやっていけませんって。私既に涙目なんですけど。マジ誰か助けてください!
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五年フルボッコww
この先は貴女様の理想的エンドでお願いします。
オテアゲ\(^p^)/