―――約束の時が来た。


伊作が俺を庇い亡くなって四ヶ月と二日後。その日が、十年前に俺達が別々の道に歩み始めた卒業式があった日だった。



十年前に指定した場所に時間通り来たが、どれだけ待っても誰も来なかった。忘れてしまったんだろうか。いや、あいつらはムカつく時もあったが約束は守る律儀な奴らだったはずだ。来ない訳がない。ならば、



そして悟る。

もう誰もこの世界にはいないのだ、と。






普段は自分勝手で我が儘な仙蔵は、本当は誰よりも仲間のことを思っていた。
ムカつくことが多くて喧嘩ばかりしていた文次郎は、本当は誰よりも気が合う奴だった。
いつも冷静で穏やかな長次は、本当はかなりのキレ者で誰よりも強かったのを知る者は少ないだろう。
かなり暴君で後輩達を泣かせまくっていた小平太は、本当は俺達の中で一番繊細な心を持つ奴だった。
…伊作は、本当に強くて優しくて泣きそうになるくらい温かかった。誰よりも同じ時間を共有したし、最期まで共にいた。


みんな俺の仲間だった。


なあ、どうやって逝った?苦しまずに逝けた?穏やかに生涯を終えることが出来たか?最期までこの約束のこと、気にしてくれた?






俺は独り逝き遅れてしまった。
これから先のことを考えるのは憂鬱で仕方無い。あいつら以上の人間に会えるとも思わないし、あいつらを裏切るつもりも無い。

例えこの後俺が何年生きようとも決して、誰にも心は開くことは無いだろう。それが俺に出来る最期のあいつらへの仲間の証だと思った。

















生きる支えを亡くした人間は弱いと、誰かが言っていたな。

だが俺はそんなことも無いと思う訳だ。だってあの約束の日からもう何十年も経った。俺は今だにしぶとく生きている。否、呼吸はしている。でも精神はとうの昔に病んでいるんだろうな。何を楽しみにこんな年まで生きて来たのかも分からず、どうして死んでいないのかすらわからない。俺は、いつになれば逝けるんだ。





早く、あいつらに会いたい。




何をすれば仲間達の隣へ逝けるの

(―――― もう、いいよな?)







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