―――運命というやつなんでしょう?
そう、これは悲劇?喜劇?
くるりくるりと繰り返しては、巡り、廻り、辿り着いた先は鏡に映った私の姿。あの頃から何一つ変わらない私の愛した人の姿。
(―――雷蔵、)
私の、貴方の、顔。
鏡に映った形を指先でなぞる。あの感情を私はまだ覚えてる。幸せだった。哀しかった。愛おしかった。苦しかった。
何も知らない馬鹿な赤子みたいに目に映る物全てを信じて、身を削って、何も失くなって、空っぽになった貴方。いや、本当は気づいていたのかもしれないけど。この世は救われないって。人の為に必死になる雷蔵を見て、何も感じなかった私はきっとヒトではないのでしょう。ただ、隣に居たいとだけ願った。ヒトではない私に笑いかけてくれた人は雷蔵だけだった。私のカミサマだった。何百年と前、十七回目の冬が過ぎた頃に私は世界の輪から消えた。自ら命を絶った。私が雷蔵を苦しめる前に。私は世界に必要ない、私が消えて世界が還元されることを祈った。最期に見たのは、絶望に塗れた真っ白の雪で、無音の悲しみ。空は澄んでいた。目を閉じて全てと別れた。
そして現在。雷蔵の顔した私。三郎というイキモノの顔は亡くなり、跡形もなく消え、存在しなくなった。それでいいと思った。そうであれと願った。あんなモノは要らない。私には雷蔵が有ればいい。同じ顔で、同じ声で、同じ事を呟く。
『 』
ねぇ、雷蔵。
今何処にいるの。