この平和な世界に転生したのは僕だけでは無かった。
"生まれ変わり"の皆の性格はあの頃と何一つ変わりやしなかった。ただ性別だけは変化があって僕や三郎次、四郎兵衛は男のままだったけど、久作は女になっていた。あの頃を知っている僕達はそれが面白くて堪らないんだけど周りは「能勢さんカワイイ」と評判で、見る目ないなあと思う訳だ。昔は久作が僕達の中で一番がっしりしていて声も低く男らしかったが、今では嘘みたいに小さくて華奢な女の子になっている。やはり生真面目だから制服は着崩さず若干スカートの丈が膝上なくらいだ。そんな彼女(?)とつるむ僕達はやたらと周りから冷やかされた。それでも離れないのはやっぱり過去からの友達だからかな。だけどクラスではしっかりしてる久作も僕達三人の前では気を抜いて、意外とダラダラしてしまうらしい。
「あつー…」
今日は晴天で気温も高い。だからか知らないけど久作のスカートはいつもより短いし、いつもはきっちりと第一ボタンまで閉められてる首元も、第二ボタンまで空いている。
「久作、上からだと下着まる見えなんだけど」
「左近は俺に興味ないだろ?だから別に気にしない」
「いや、気にしようぜ!?流石に。左近だけじゃなく俺やシロもいるんだしさ」
「…お前らも別に問題ないだろ?」
「久ちゃんのピンク色なんだねぇ」
「…」
四郎兵衛の言葉に久作は眉を潜めたが何も言わなかった。それから今日の時間割についてや課題、小テストの話をしながら暑さにやられダラダラと登校していると背後から声をかけられた。
「久作先輩!」
聞き慣れた声に振り向くと、これまた見慣れた顔があった。元図書委員会で久作や僕達の後輩のきり丸だ。こいつも転生していて今でも僕達の後輩で、久作の彼氏なんだそうだ。
「きり丸…っ」
「おはようございます!今日、バイトないんで一緒に帰りません?」
「…うん」
「じゃあ放課後クラスまで迎えに行くんで、待ってて下さいね!」
「うん、ありがと」
僕達を無視して自分等だけの世界に入って行ってしまった二人はピンク色のオーラをこれでもかと言うくらい放っている。これだからリア充は。三郎次や四郎兵衛も呆然とそのピンクオーラの中心を眺めている。
「久作嬉しそうだな」
「そりゃ久々のデートだしねぇ」
「デレデレだなー…」
ほのかに顔を赤く染めて笑う久作は僕達の知っている久作では無く、きり丸だけの久作なんだろうなと思う。
「じゃっ先輩、また放課後!」
そう言って久作の右頬に軽く唇を落とし片手を上げて去っていくきり丸に、久作は顔を真っ赤に染め上げてその背中を眺めていた。すれ違い様に一瞬きり丸が僕達を睨んだのは、気のせいではないんだろうな。
昔とは違う君
(川西も池田も時友も久作先輩の下着見やがって…消え失せろ!)
(…なんか寒気が)
(…俺も)
(僕もー…)
(あ?風邪か?)
まださっきの熱が冷めないのか耳が赤い久作は、やっぱり女の子で、可愛いとか思ったりした。