今日は、今までのどんな時より素晴らしい。
だって六年間、思い続けたあの人と一生を共にできるんだから。
きっと、俺達は赤い糸で結ばれてる。
「立向居、おめでとう!」
「あっ、円堂さん!ありがとうございます!」
中学の頃から変わらない、あの笑顔。
この人が居たから、俺達は結ばれたんだと思う。
「まさか、お前達に先を越されるとはな」
「でも、鬼道さんもそのうち結婚するんでしょう?」
"まぁな"と答える鬼道さんの視線の先には、不動さんがいた。
二人は最初"すぐ別れるんじゃないか"と噂されていた。
それが、もう五年も続いてる。
鬼道さんだけじゃない。豪炎寺さん達や、佐久間さん達、辺見さん達だって。
風丸さんに至っては、既に妊娠三ヶ月だそうだ。
でも、結婚が一番早かったのは俺達だった。
「なぁ、綱海は?」
「条玲さんなら今、控室に」
「もう、立向居は綱海の晴れ姿見た?」
「いえ、一度も…」
俺は、まだ一度もウエディングドレス姿の条玲さんを見ていない。
条玲さんは、風丸さんとドレス選びに行っていたから。
今日、初見なのだ。
だから、余計に楽しみ。
"教会にしたい"と言ったのは、条玲さんだった。
かわいいなと本気で思う。
まぁ、あの人はいつでも可愛いけど。
条玲さんと初めて出会ったのは、ホントに偶然だったね。
多分、一目惚れなんだと思う。
そして初恋。
俺のハジメテはすべて条玲さんのものになった。
あれから二人で、六回も季節を繰り返した。
俺達は、何一つ変わらない恋をしていた。
そんなことを、教会の祭壇の上で条玲さんを待ちながら思った。
サッカーの試合より、緊張する。
扉が開かれる。
真っ白なウエディングドレスに身を包んだ条玲さんは、凄く綺麗だった。
条玲さんは、お義父さんと一歩一歩近づいて来る。
頬が少し赤い。
あの人も、柄にもなく緊張してるみたい。
お義父さんから、俺の腕に条玲さんが移る。
お義父さんは心なしか淋しそうだった。
「勇気くん、条玲を頼むよ」
いつも仲良くしてくれていたお義父さん。
だけど、初めて男として認められた気がする。
「はい」
お義父さんに頭を下げると、条玲さんが俺の腕をギュッと掴んだ。
「綺麗です。条玲さん」
「勇気も、かっこいいよ」
"夢みたい"と二人で少し笑って、祭壇に上がる。
『汝、立向居勇気は新婦、綱海条玲を妻とし、病める時も健やかなる時も、共に歩み、愛し、崇め、死が二人を分かつまで、お互いを慈しみ貞節を誓いますか?』
「誓います」
『新婦、綱海条玲は誓いますか?』
「誓い、ます」
条玲さんは、真面目な顔をしていた。
凛とした声で、はっきりと神父さんの目を見て。
俺は、条玲さんのこういう所に惚れた。
『では、誓いのキスを』
俺達は向かい会って、お互いの顔を見る。
「…勇気、俺すごい幸せだ」
目に涙を浮かべて微笑むから、抱きしめたくなった。
「俺もです」
ゆっくりと唇を重ねて、優しく包み込む。
出会った時、俺は条玲さんよりも小さくて頼りなかったかもしれない。
だけど、今は包み込むことができる。
「何があっても、必ず護るから」
教会の鐘が鳴り響く。
確かに今、俺達は永遠を共にする約束をした。
教会の外には、俺達を祝ってくれる人で賑わっていた。
青空の下、条玲さんはとても輝いている。
「おめでとう!」
みんな笑顔だった。
俺達も、つられて笑う。
「ブーケ投げるぞ!」
ポーンと空に上がったブーケは、孤を描きながら不動さんの腕の中に納まった。
「次は鬼道と不動か!」
不動さんは、顔を赤くして俯いていたけど嬉しそうだった。
「いいな!こういうの、中学時代に戻ったみたいで」
「そうですね、凄く楽しいです」
「あ、勇気に言わなくちゃいけない事があるんだ」
何か思いついた様に条玲さんは大きい声で言った。
「あのさ、赤ちゃん出来たんだ!」
「「「え、えぇー!?」」」
此処に居る全員が声を上げた。
条玲さんは、嬉しそうに笑う。
本当に今日は、今までのどんな貴女より美しく輝いている。
今の俺は、誰よりも幸せ者だ。
「本当ですか!」
「おぅ!昨日、病院行ってきた」
まさか、デキ婚だとは思わなかったけど。
高校を卒業して、まだ三ヶ月。
一気に家族が二人増えるようです。
「幸せにしろよ、勇気!」
「もちろんです!」
これから、二人で共に新しい人生を歩んで行く。
"太陽が沈み、星が昇る時は二人で空を観ましょう。
夜が来たら、朝になるまで二人で眠りましょう。
悲しみがあれば、共に泣いて
喜びがあるなら、共に笑いましょう
優しさにあふれた貴女がとても好きです。
僕と結婚、してくれませんか?”
プロポーズの言葉どうりにはいかないかもしれない。
これから先は永い。
ケンカすることも、悲しませてしまうこともあるだろう。
だけど、
最期は必ず、貴女の元へ帰ってくるから。
子供には、暖かい愛で包んであげましょう。
条玲さんと一緒にいるだけで、夢の全てがいつまでも続いていく。
きっと、条玲さんは俺の運命の人。