※情緒不安定な綱海さん




堪らなく不安になることがある。大好きな友達が、サーフィンが、サッカーが、全てが俺を嫌ってる様な気がして、怖くて、哀しくて。意味もなく大声で泣きたくなって。理由なんて解らない。それが一番謎だ。もう中三になるのに、と情けなくなるが止めることなんてできない。俺のキャラじゃねえって、わかってる。だから困ってるんじゃねぇか。でもこういう事は、定期的に俺に襲い掛かる。


ああ、また…
そんなとき俺は一人で居られる所を探す。誰にも見つからない、たった一人の場所。だけど今は日本代表合宿中だから、なかなか一人になれない。耐え切れず練習をサボって自室に篭った。ゴメンな、みんな…



「っふ、ひっく、…」



流れ出した涙が止まらない。嗚咽が漏れる。声を押し殺そうと唇を噛む。苦しくて堪らない。



「っ、こ、わい…よ、」



自分でもよく解らない感情がぐるぐると入り混じる。胸が裂ける様な感情。言葉では、上手く表すことが出来ない。



いきなり、コンコンとドアが叩かれる音がした。



「綱海さん?いますか?」



立向井の声がする。どうしよう。きっと、俺の両目は赤くなってる。こんな顔見られたら、あいつは優しいから心配するだろう。どうすればいい?


「…綱海さん、入りますよー」

「っくるな…!」


思わず怒鳴ってしまい、これでは立向井が傷付いてしまったのではないかと、後悔した。


「綱海さん、泣いてるんですか?」


立向井が近寄って来て俺の顔を覗き込む。お願いだ、弱い俺を見ないで。幻滅しないで。嫌だよ。


「どこか痛いの?」

「いたく、ない…」

「じゃあ、どうして…」


立向井が俺の手を握って、心配そうな顔して問い掛けてきた。
でも、答えることはできない。不安だから、なんて格好悪い。
それに、二つも年下のこいつに余計な心配なんて掛けるわけにはいかない。


「なんでも、ないさ」


涙は既に引っ込んだ。笑え。こいつを安心させるために。笑え。自分を保つために。笑え。笑えよ…


「しんぱいかけてわるい。もうだいじょうぶ」

「綱海さん、無理して笑わなくたって良いんですよ」


そう言って立向井は俺を抱きしめた。いつもより、力強く。
体温が高い、こいつの腕のなかはとても安心した。
俺は、嫌われてなんかいない。


「綱海さん、愛しています」

「…ありがとう。おれもあいしてる」


また、俺は自分自身でいられる。







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電波文。
旧サイトにアップしていたのを手直し。








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