『円堂が相手チームの必殺シュートを止めたっ!イケる…これはイケるぞ!』
テレビの中で、円堂たちがエイリア学園と戦っている。俺もあいつらと仲間なのにそれを見てるだけ、というのは少し悔しかった。
「みんな、調子はどうだ?」
病室の扉を開けたのは、一週間前に雷門町へ帰って来た風丸だった。染岡がテレビの電源を切った。
「ああ、もう大丈夫だ」
「怪我も治ったしね」
「そうか、ならよかった!」
心なしか風丸が機嫌が良い。ずっと帰って来てからどこか辛そうだったので、吹っ切れたかと安心する。
「機嫌が良いな、風丸。何か良いことでもあったのか」
「ああ。…力を手に入れたんだ」
「力?」
まさか、いや、しかし風丸がそんなことする訳…
「エイリア石さ、これがあれば強く成れる」
風丸が、狂ってしまった。優しかった彼が、美しいかった彼が、俺達の副キャプテンだった彼が。悲しそうな眼で微笑んだ。
「風丸!お前…っ」
染岡が風丸に掴み掛かる。それでも風丸は笑っていた。
「解ってるさ、いけないことしてるって。でも…つよくなりたいんだ、俺は!」
風丸は眼から一筋の涙を零した。その姿は俺が憧れた、あの凛とした風丸と重なる。
「これで円堂の隣に居られる…」
止められない、と思った。
風丸がこんなにも円堂に依存してるだなんて思ってもなかったから。
「お前たちも、俺と一緒に来ないか」
そう言って、風丸は病室から出て行った。
俺は友達が狂って行くのを観てることしかできなかった。
無力を噛み締めた病室
それは何もできない自分を苦しめる檻でしかなかった。
――――なぁ、風丸
お前が望むなら、先が真っ暗な結末も良いかも知れない。
お前を止められなかった代わりに、俺も一緒に堕ちてしまおう。