今日の俺はいつも以上にご機嫌です。理由は超簡単、片倉がスカートを履いているからだ。いつもならタイトなスキニーやらカーゴパンツなはずの片倉の下半身は、今日はアイボリーのスカート。なんて言うの?フレア?つまり風で揺れる控え目なレース。すらっとあらわになる白くて健康的な美脚。露出しない色気ってあるとは思うし好きだけどさ、やっぱり男としては好きな子のスカートは格別なもんで。ああかわいい。片倉くそかわいい。ほんとかわいい。知ってるか?こいつ俺の彼女なんだぜ!


「片倉、スカート似合うな」

「えっあ、いや…」

「いつものパンツスタイルも好きだけど、スカート姿も新鮮でいいな」

「…ありがとう」


照れた片倉はかわいい。まるで天使のようだ。頬を染めて俺に見えないように俯くか目を泳がせる。思わず頭を撫でてしまう程かわいい。片倉の右手を取って俗に言う恋人繋ぎとやらをして目的地に向かい歩き出す。今日は片倉のリクエストで駅前のカフェのケーキを食べに行くんだぜ。昨夜、ケーキを食べる片倉を想像してベッドの上で悶えていたのは内緒だ。生クリームプレイって一生に一度はやってみたいよね!

そんなことを考えていたら、片倉と繋いでいる手を引っ張られた。まさか心の声ばれた?いやいや、ないない。大丈夫だ。


「将臣、この店だ」

「可愛らしいお店だね。えっと、トレ…ゾール?ああ、tr´esorか」

「分かるのか?」

「ちょっとだけなら。宝物って意味だよね」


少し知的さをアピールしてみた。中二の時に意味も無くフランス語覚えたのがこんな所で役に立つとは思わなかったよ。ありがとう、厨二病だった頃の俺。正直消え去りたいレベルで恥ずかしい俺の黒歴史だけど片倉に良いとこ見せる為なら引っ張ってくるぜ。厨二病万歳。片倉が凄いなコイツって俺を見ているのが分かる。さあどんどん惚れてくれ。因みに、俺は最初から片倉にメロメロ(死語)さ!


「ここのティラミスと苺ショートが美味いって聞いてな。食べてみたかったんだ」

「へぇ、楽しみだな」


カランと鳴るベルを聞いて店内に入ると、所謂女の花園。お客さんは女の子ばっかり。勿論、店員さんも女の子ばっかり。可愛い装飾に穏やかな音楽の流れる落ち着いた店。少し俺には敷居が高い気がするのは気のせいじゃないはずだ。でも、片倉が嬉しそうに奥の席に向かうので急いでついて行く。背中に刺さる好奇的な視線が痛いぜ…。

一番奥を陣取った俺達はメニューを開いた。オススメはケーキセットらしい。お好きなケーキ一つとドリンク、といった無難なメニューでリーズナブルなお値段。まあ、普通これにするよね。


「将臣はどのケーキにする?」

「ん、まだ迷ってる。片倉は?」

「ティラミスにしようと思う。ショートも気になるけど」

「じゃ、俺が苺ショートにするよ」


決まったところで店員さんを呼んでケーキセットを二つ頼む。因みにドリンクは二人とも紅茶。なんか紅茶も美味しいんだってさ。コーヒーも良いけどやっぱり紅茶が好きだな。だって香りも良いし、心がすっきりするから。しかも紅茶を優雅に飲む男性って紳士的でモテそうじゃない?あと、紅茶を飲む片倉を想像してみたけど、一枚の絵画の様に美しかった。この世のものとは思えないくらいに。天使かと思ってたけど実は女神だったオチっすか?


「なぁ、将臣」

「ん?どうした?」

「…お前は私のこと名前で呼ばないな」

「えっ」


名前で呼んで良かったの?てか片倉はそんなこと気にしてたの?えっえっまじか。なにそれかわいい。まじ俺の彼女天使。俺如きが片倉の名前を呼んでいいのかとはずっと悩んでいた事だけど、まさか片倉から言われるとは思ってもみなかった。え、呼んでいいの?ほんとに?小十郎って呼ぶの?うわ照れる。くそ照れる。でも嬉しい。呼ぶよ、呼んじゃうよ。


「小十郎?」

「っ…」

「小十郎、小十郎、小十郎」

「…も、やめ…恥ずかしい…」


また照れてる。意外と照れ屋なのかな。イメージはクールビューティ系な感じだけど。うは、ギャップ萌えですね。大好物ですぞ。


「名前で呼んでいいのか、ずっと悩んでいたんだ」

「…私も、呼ばれないから不安だった」

「悪い。今日から名前で呼ぶな」

「おう」


ちょうど良いタイミングでケーキセットが運ばれてきて甘い香りが漂う。いただきます、と小十郎が小さく言ってケーキにフォークを入れた。俺もそれに倣い苺ショートに手をつける。クリームはふわふわ、スポンジはしっとりとして口の中で溶けるように広がる。甘い中に苺の甘酸っぱさがあって、思わず笑顔になる。これは絶品だな。


「小十郎、ほら。あーん?」

「は?…え、と」

「あーんして」

「う…、あー…ん」


真っ赤な顔してもじもじしながら小さい口を開ける小十郎まじジャスティス。グッジョブ俺。フォークで一口サイズに切った苺ショートを天使の口に差し出す。ぱくっと食べて顔が綻んだ小十郎は、言葉では言い表せない可愛らしさがあった。なんてありがたき幸せ。


「美味しいな、このショート」

「だろ?あ、てっぺんの苺食べる?」

「いいのか?」

「もちろん。代わりに小十郎のティラミス、一口欲しいな」


イケイケ俺!たまには図々しくがっついて行け。草食系男子じゃないことを見せ付けろ!
小十郎は戸惑いながらティラミスをフォークで崩し、ちらっと俺を見た。何、あーんしてくれる雰囲気?いっていいの?


「えっと、だな…」

「もーらい」


フォークを持つ小十郎の美しい手ごと引っ張って、ティラミスを一口。ぱくり。あ、小十郎また顔赤くなってる。予想以上に美味しいぞこのポジション。


「将臣、」

「いやあティラミスも美味しいな」

「………」

「きっと小十郎が食べさせてくれたからだね」

「…ばか」


拗ねてプイっと視線を反らす小十郎戴きました。ごちそうさまです。多分、小十郎はその「…ばか」って一言で俺がどんだけ興奮してるか分かってないのだろう。もしこの場所が店じゃなくて我が家だったら襲ってるぞ。息子が大暴走しちゃうって。ほんとに、冗談抜きで。


「帰ったら、小十郎を食べさせてね?」


渾身のドヤ顔(ウインク付き)でそう言ったら、小十郎が動かなくなった。…あれ、やっぱりキモかったかな。



幸せだと笑い合う幸福

(眩しくて温かい日々よ、)









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