勘鉢♀

たぶん学級家族の馴れ初め…?

―――――――


「あと一年半かぁ」


突き抜けるような晴天。誰も人がいない堤防。夏休みを目前に控えた今日、登下校を共にしている鉢屋がポツリと呟いた。


「何が?」

「高校卒業するのが」


いつものようにふざけた発言ではなく、かなりまともな事を言ったことに少なからず驚く。


「卒業したら二人で海行きたい」


そう告げる鉢屋を横目で見ると、いつものような皮肉な笑顔ではなく穏やかな笑みを零していた。


「勘は卒業したらバイクの運転免許取る予定なんだろ?」

「まぁ…取る予定なだけ、だけど」

「後ろに乗せて。それで海行こうよ」

「じゃあバイクは大きいの買わないとね」


俺達はまだ卒業まで時間はあるのに卒業してからのことについての話をして、約束をする。ただの目標だけど、あるだけで心持ちが違うから。


「車体は赤がいいよ、真っ赤のやつ」

「うん、赤がカッコイイかな」

「財布と携帯だけ持ってさ」

「映画みたいだなぁ」


安っぽい映画のワンシーンにある様な、別に特別なことなんて何もないことな訳だが、鉢屋は嬉しそうに話す。


「…私の、昔からの夢」

「うん?」

「…好きな、人とバイク二人乗りして海に行くこと」


顔を赤く染め俯きながら、小さな声で言った。でも俺にはその言葉は微かに聞こえたので、恋人である俺はそのかわいい夢を叶えてあげないと。


「…俺はその時に、好きな人にプロポーズしようかな」


鉢屋の空いていた左手を握って、告げた。彼女の耳はポッと火が点いた様に赤くなっていく。


「ね、受けてくれるよね」

「………もちろん」









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