夏祭り
官兵衛
「あっ!あっちでは盆踊り踊ってます、見に行きましょうよ官兵衛さん」
「盆踊りとは、地獄での受苦を免れた亡者たちが、喜んで踊る状態を模したといわれる。浮かれ踊っている現世の亡者達ということだ」
「…見に行く気が失せるような事言わないでくださいよ。それに、お祭りに来てる時点で官兵衛さんも浮かれてる現世の亡者ですよ」
「秀吉殿や卿が無理に連れてこなければ、此処には来なかった。喧しい人混みは好かん」
「ああ、この人混みは確かに嫌気がしないことも無いですけど。でも、こう皆で騒いでる楽しい雰囲気がいいんじゃ無いですか」
「馴れ合いも好かん」
「どんどん坩堝に嵌まっていく…。というかまずその格好が悪いですよ!お祭りに行くのに何時もの黒い格好って、周りの人々が好奇な目で見てるの気づきませんでした?!私も迎えに行った時吃驚しましたよ!」
「そういう卿は華やかな装いだな。益々の浮かれ様だな」
「うぐぅ…キイイ!もう!官兵衛さんなんか知らな…」
「卿こそ普段の戦装束など脱ぎ捨て、その格好をしていれば良いものを」
「え」
「普段から浮かれた脳ということだ」
「!!一瞬ときめいた私が馬鹿だった!こうなったら屋台見物に無理矢理引きずり回しますよ、行きましょう!官兵衛さんの浮かれ顔を拝むまで帰しませんよ!」
「ここまで来たからには逃げも隠れもしない、そう引っ張るな」
「あーあ、あの子ったら。振り返れば浮かれ顔な官兵衛さんが見れるのに」
「そうじゃなー半兵衛。あんな楽しそうな官兵衛は見たことがないわ!少し気味が悪い気がせんでもないが…」
「ほんの小指の先程の変化だけどね、秀吉殿。官兵衛殿も素直に褒めとけばいいのに、一言余分なんだから」
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