戦国msu | ナノ




「トリッk」

「喧しい」

ぴしゃーん。トリックオアトリートを最後まで言う前に、見事に扉を閉められた。と言うより最初のほうさえちゃんと言えなかった。

「ひ、酷い!せめて最後まで言わしてよ!」

「煩い黙れ喧しい俺は忙しいのだよ帰れ」

息継ぎ無く一気に罵られ、名前は肩を落とす。リビングのソファに腰掛けている吉継に泣きついた。

「吉継ー!折角血糊だらけのナースの格好して張り切って三成の家に押しかけたのに、構ってくれない…」

「家にあげてやるだけ寛大だったと思うが。と言うより、何故俺まで付き添わねばならん」

「それは勿論、はいこれどうぞ」

自分の鞄とは別で持ってきた紙袋を吉継に差し出す。受け取って中身を確認すると、吉継は一瞬固まって溜息をついた。

「一応聞いておくが、俺に拒否権は」

「ついてきたんならそのまま流れに乗ってください」

拒否権は無いらしい。吉継本人も断るほうが厄介になるのが解っていたので、言われるがまま楽しむ方を選ぶ。
また溜息をつき、紙袋を持って脱衣所に消えた。
名前は矛先を吉継に変えたはいいが、三成に無理にでもハロウィンをさせたくてうずうずと考えを巡らせていた。

「ほら」

「あれ、いつの間に」

考えを巡らせていると、いつの間にか三成が目の前にいて、茶を人数分リビングの机に置いた。

「気が利くね、三成。ありが」

「それを飲んだら早々に去れ。茶番には付き合わん」

またしてもぴしゃりと言われた。言葉が遮られ、反論しようとする名前だが、あることに気がつく。
三成が目を合わせてくれない。それどころか目を頑なにそらしている。

「三成?」

「…何だ」

呼んでも、やはりそらしている。これはもしや。

「三成、もしかして私の仮装姿に照れてる?」

「!」

指摘されると、効果音がつきそうな程瞬時に三成の顔が耳まで赤くなり、慌てて後ろを向いた。図星のようだ。これは面白い。

「う、自惚れも大概にしておくのだよ!」

「じゃあ、やっぱりこの格好似合わない、かな…」

いつもの三成の反論に、すかさず演技で落ち込んでみせた。俯いて手を摺り合わせて握る。
が、すぐに三成からの反応がない。これは外したか?と三成の顔を伺おうとしすると、急に両肩を掴まれて背もたれに押し付けられた。突然の衝撃に目を丸くする。眼前には三成のいつに無く真剣な顔があった。

「いいかよく聞け、男の前でこんな格好をするな。『悪戯してください』と言っているようなものだ」

「な、なんだ。何を言うかと思えば。だって三成と吉継だから別にいいやと思って」

思った事をそのまま口にすると、目の前の三成は眉をわざとらしく寄せて短く溜息をついた。

「俺達は男として見られていないということか…」

「へ?」

「何でもない。わからないのだったら教えてやる、こういうことだ」

「何が…」

三成が呟いたことが理解できなかったのだが、聞き返す前に口は三成の唇に塞がれていた。

「?!…っん」

全く予測できなかった三成の行動にすぐに理解ができず、反応ができない。その間にも三成は角度を変えて好きに名前の唇を吸って、抵抗しないとわかると、ほうけて力なく開いた口に舌を入れた。

「や、ふぁ、っ」

流石にこれには驚いて手が出て抵抗を試みるが、三成が腕を両方掴み、ソファの座席にそのまま名前を横にして押さえつけてしまったので、何もできなくなってしまった。
抵抗の声を上げようとすれば、その際動く舌を絡め取られ、柔らかい感触を根元からゆっくりとなぞるように舐め上げられる。これまでにされたことが無い感覚にぞくぞくと腰が浮いた。なんだこれは。何故三成にこんなことをされている?

「…俺をほうかってお前達は何をしているんだ」

かけられた声に、流されていた意識が覚醒して思い切り三成を突き飛ばす。吉継だ、助かった。三成も特に深追いせずに離れた。
吉継は名前に渡された、血糊がついたドクターの仮装を着て帰ってきた。三成に着てもらおうと思っていたが、吉継もとても似合っている。
美形だから何でも似合うだろうね…。

「吉継、流石かっこいい…じゃ無くて三成が!三成に襲われた!」

名前は吉継の背後に隠れて言った。

「お前がそんな格好を俺達の前でやすやすとするからだろう」

「え」

だが、吉継も背後に隠れた名前に向き合うと、足をはらってまた名前をソファに押し倒してしまった。

「痛い…よ、吉継?」

「折角用意してもらったことだ。お医者さんごっこでもするか?」

名前の上に乗って、吉継は首から下げている聴診器をちらつかせて言った。最早されるがままである。まさか、吉継までもが。

「いやこれはハロウィンの仮装だっ…やっ、ひゃう!」

弁解をしようとするが、聞く耳を持たない吉継が聴診器をつけ、名前のナース服の前のボタンを数個はいで谷間のあたりに聴診器を当てた。くすぐったさと、聴診器の冷たさに変な声が出てしまった。慌てて口を抑えようとするが、横から見ていた三成が両腕を押さえつけてきた。身動きが取れない。

「ふむ…心音が早い、それに体も熱い。早々に処置をしなければ」

「吉継、お前とても楽しそうだな」

各々たのしんでいるようだが、名前からしてみると今の状況と辱めが全く理解ができない。

「何でこんなことに…」

「「先に悪戯を仕掛けたお前が悪い」」

二人の台詞は一寸違いも無くかぶった。名前は身の危険を今更感じつつあったが、手遅れである。仕掛けたのは自分からなのだから。

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