★図書館の隆景さん
「おや、雨だ」
「え…傘忘れた」
「この梅雨の真っ最中に傘を忘れるとは。流石です」
「今日は天気予報で降らないって言ってたから置いてきたんです!教科書とかPCとか荷物重いんですからね?!」
「貴女のアパート、此処から目と鼻の先な気がするのですが」
「はいそうです普通に傘忘れましたごめんなさい」
「まあこのくらいの雨なら走れば大丈夫でしょう」
「……あ、すんごいナイスタイミングで土砂降りになってきた」
「……」
「声を押し殺して笑わない!!」
「そうこう話している内に閉館時間です。帰りますよ」
「うう…言われずとも。一瞬濡れるだけだもん」
「此処に私の傘が一本あります。そして貴女は傘を忘れたと言います。外は土砂降りで真っ暗です。さてここで問題です、私はどんな行動を取るでしょうか?」
「傘を見せ付けた挙句私がこの重い荷物を濡らさぬよう全力で走って滑り転げる様を真横で傘をさしながらガン見する」
「…貴女が普段、私をどう思っているのかようくわかりましたよ」
「何とでも言ってください。荷物持った折れない心持ったよし準備万端行くぞ」
「はあ…正解は、全て貴女の望みのままに」
「…は?」
「相合傘で寄り添って荷物を持ちきちんと貴女の部屋まで送り届けます、初めからそのつもりですから」
「なっなんでわざとらしく相合傘と寄り添ってを強調するんですか?!そんなわたし思ってなっな…!」
「(予想通りの反応、いただきました)さあ、帰りますよ」
隆景は荷物を引ったくって軽々と持ち、手を差し出す。
名前がおずおずと手を取ることも、予想通り。
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