「え、嘘、吉継さん?」
「お前か」
「お前か、じゃないでしょう?!なんでこの雨の中傘も持たずに堂々と歩いてるんですか?」
「恐らく盗られた。傘置き場に無かったからな」
「盗ら…だからってそのまま濡れて帰るなんて」
「問題無い。流れに」
「流れに乗らない。問題ありまくりです。さあ傘入って下さい、駅まで強制ですからね?」
「すまない…。…この傘は誰の趣味だ?」
「あ、男物だって暴露ました?大きいですからね。えへ、実は私も傘忘れちゃって。三成が折畳あるからって貸してくれたんですよ。小さい折畳貸さないで大きい方貸すなんて、三成らしいですよねえ、ツンデレめ」
「……」
「あ、傘持ってくれるんですか?ありが…ってえええぇ何で畳んじゃうんですか!?濡れる!」
「行くぞ。俺とお前は初めの流れ通り濡れて帰る他無い」
「何でですか、三成の傘させばいいじゃ無いですか!」
吉継は今畳んだばかりの傘を再度広げ、上では無く横にさした。調度顔あたりにさされる。
「なに…」
吉継を見上げるが、その瞬間唇が重ねられた。傘を盾に周りの目隠しにしたのだった。
ぺろり、と唇を一舐めされて離れる。
「行くぞ」
何が起きたか理解できないまま手を掴まれ、引き摺られて雨の中消えていく二人であった。
「三成、傘を済まなかったな」
「…俺は名前に貸したと記憶しているのだが、何故吉継が返しに来るのだ」
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