○又兵衛(婆娑羅)
「ああ…さみぃ」
「寒い?こんなに湿気で蒸し暑いじゃないですか」
「雨がこんなに降ってるじゃねえかよぉ。冷えてしょうがねえ」
「そんなにガリガリだからですよ…。あ、私インスタント珈琲を水筒で持ち歩いてるんですけど、飲みます?温まりますよ」
「ほー。気が利くじゃねぇか」
「暑くてもホット珈琲はお腹に入れたくなるんですよねえ。はいどうぞ」
「…〜はぁ、あったけえ…。おい、雨で屋上出れねえ事だし…」
「あ、場所かえます?裏庭に良い穴場があるんです」
「ちげぇよぉ、木偶が。今日は此処でサボる」
此処と言うのは、屋上の入り口のちょっとした屋根があるスペースで、お世辞にも広いとは言えない。
「ここですか?」
「お前湯たんぽなあ」
「えっ、うわあ!」
又兵衛が正面から抱きついてくる。
「あれ、本当に又兵衛さん冷たいですね」
「ったりめぇだろぉ…はあ」
暫く身を任せていると、プチンという音ともに急に胸の圧迫が無くなった。
背後に回った又兵衛の手が、セーラー服の上から下着のホックを外したのだ。
「?!なっ…こんなとこで何してるんですか!」
「此処でヤる」
「ちょ、やだ、って…!」
「終わる頃には湿気と汗でベタベタだろぉなあ…ヒヒ。人が来たらお前どんな顔すんだろぉなあ?」
「本当にやだ…!」
「うるせえ」
無理矢理口づけられた又兵衛の口内は、甘い珈琲の風味だった。
● back