戦国msu | ナノ




※一応吉継と浸るの夢主
見なくても読めます











「元就さん、隆景さん…!や、やめてください。何でこんな事を…!」

「何故って、君に知ってもらいたいからさ。毛利元就の汚い部分を。2度とあんなことさせない為にもね」

「私は毛利の為に動くのみです」

「やだ、ごめんなさ…!」

「やれやれ、謝罪は聞き飽いたかな」

「…名前、すみません」

「ひっ…!」













「あっはははははは!ごっごめんなさ…っひひ!」

名前は隆景により長座の体制で羽織い締めにされ、身動きが取れない所を元就により脇腹を擽られていた。必死にのたうちまわるが、隆景の腕は微動だにせず。可愛い顔してなんて力だ。無駄に力が入っている。
絶え間無く弱いところ縦横無尽に擽る元就は、名前の両足を脇に抱えて固定し、足の裏に取り掛かった。
名前は死ぬ。

「ぎゃあっはっは…ごめんなさいごめんなさい本当にごめんなさいあはははは!」

「まさか本当に私の部屋の物…というより私の著書だけを全て燃やすなんて。可愛い娘が帰ってきたと思ったらこれだ。残念だよ」

「私もまだ読んでいない父上の書を燃やすとは。良い度胸です。これは修行ですよ」

事の発端は一年程前。
名前は毛利家に仕えていた。仕えるというより、我が子同然に可愛がってもらっていたのだが。ある日元就から武将列伝を完成させるよう命を出され、流浪の旅に出たのだった。その折元就や、隆景を初めとする長男・次男も泣く泣く名前を送り出したのだが、泣くくらいなら他の人を頼め!と今なら言える。それ程戦三昧で辛い旅だった。訪れる先訪れる先、戦・戦・戦…。毎日と言っていい程皆が乱世を楽しんでいた。巻き込まれて多くの地を回ったが、とうとう列伝が完成し、本城である郡山に帰ってきたのだった。

そして名前は帰参の報告よりも先にすることがあった。

元就の著書を焼べる事である。

本当に、過酷な旅であったのだ。朝から晩まで戦いっぱなし。何故私を行かせた、世間知らずという訳では無かったはずだ。特に精神的にも身体的にも抉られた織田信長を訪ねた時から心に決めていた。
帰ったら即刻焼べる、全て燃やすと。

門兵に耳打ちして頼み込み、こっそりと知られないように城内に侵入した。真田の元に訪れた際くのいちから学んだ忍び足で、元就の部屋まで見事に誰にも見つからずに来ることができた。元就が部屋に居ない事が確認できたら、後は一瞬だった。

大事そうに積んである分厚い著書達。其れを部屋の外の庭に片っ端から全力で放り投げた。

書物はどさどさと音を立てて積まれて行った。その音に何事かと、部屋のあちこちから家臣や女中、そして隆景ら三兄弟が飛び出してきた。だが名前には構っている暇が無い。無視して放り続ける。

「あれは名前じゃないか?!」

「おお、名前!よく帰った!しかし帰参の報告無しに何を」

「何か放って…もしやあやは、父上の著書?!」

隆元、元春は名前の帰りを喜んでいるのだが、直ぐに様子がおかしいことに気づく。三人の中でも、本を愛する隆景には瞬時に其れが元就の著作を放っていると解った。
呆然としている皆を尻目に、名前はどこからとも無く火がついた松明を取り出した。ついでに油を撒き散らしている。
隆景の顔が絶望に染まる。聡いが為、何故こうなり何の仕返しか解ってしまったのだ。
名前からすれば中々見れない其の表情もいい気味である。悍ましい笑みを称えて山積みの書物に歩み寄り、ゆっくりと松明から手をはなしていった。隆景は見たことがない慌て様で駆け出す。

「名前!お願い、やめ…」

時既に、かなり遅し。
悲痛な叫びも伸ばした手も届くわけが無く、松明は落ちて一瞬で書物達は炎に包まれた。庭が赤く染まる。雄叫びと悲鳴が上がる。それは炎を見て叫んだ者と、名前の冷静な眼差しと似つかわず上がった口角を見た者と二分されるだろう。

「ああ、ああ…父上の…父上の著書が…まだ読んでいないものが…あったのに…」

「隆景?!隆景、しっかりしろ!」

「どうせ父上は嫌でもまた書かれる!暫しの辛抱だ!」

隆景は脚がおぼつかずよろけ、隆元と元春が支えるが、呆然と勢い良く燃える書物達を眺めるしか無かった。
それを見て名前は、習ってきた通りに目を細め、 見下してこう言うのだった。

「苛烈、ぞ…!」

信長ごっこで決まり、幾分か心が晴れた頃に元就が駆け付けて事は終息に向かったのだが。
















「頼んだのは確かに私だけど、出発間際は張り切って居たじゃないか」

「あんなに辛いなんて…聞いてないれふ…」

漸く解放された名前は
全力で暴れ全力で擽られたので四肢から力が抜けてしまい、長座のままの隆景の上でぐったりと寛ぐ。
名前は恥ずかしいだのを考える余裕が無いだけだが、当の隆景はというと、ちゃっかり名前の腹に手を回し、我が物と抱いて満足そうに笑っていた。普段名前は嫌と言う程構って来る三兄弟から逃げていたので、隆景は触れ合う機会を伺っていたのである。まるで妹、否、娘を愛でる様に抱く。
そんな名前をものにする隆景を、端から隆元と元春が悔しそうな目をして訴えかけてきていた。だが彼等は仕置に反対していたので、今更参加は出来ず、柱の影より様子をうかがっていた。

「はあ…。ま、名前の弱い処をこれでもかと攻め立てられたし。著書も満足行く物には程遠かったから、また幾らでも執筆するし。折檻はこれくらいにしておこうか」

「残念ですが、父上がそう仰るなら、待つ楽しみができると言うものです。よしとしましょう」

「ごめんなさいぃ。でも、うう…私此処にいるとまた皆に甘えちゃう…辛かった」

名前は確かに思い切りすぎた行動に出たと自覚していた。広い場所で燃やした訳ではなかったので、下手したら火事に繋がっていたのだ。
それに、今迄どれだけ元就や隆景達に頼っていたか、旅に出て痛感した。守ってくれる者も側におらず、この乱世では一人きり同然なのだ。誰か居るのが当たり前だった。それが甘えだったのだ。
それでも。
名前は甘えだと解っていても、安芸が恋しかった。どんなにくどい元就や鬱陶しい三兄弟が居たとしても、それが常になっている名前には、旅先は寂しかった。

身体的にもとても、とてもしんどかったが。其処は否定が出来ないのだが。

「名前」

いじけだした名前に、元就がしゃがみ込んで目線を合わせてきた。先程より真面目な面持ちだ。名前も真剣に耳を傾ける。

「私はね、列伝を完成させて欲しいだけが願いでは無かったんだ。世間、国や人物、政、考え方…名前を家に縛り付けていたからね、此の世を名前自信で見極めて欲しかった。出会った武士を見て何か感じたかい?」

「そういうことでしたら、沢山学べましたよ元就さん。人は、他人と相容れない道を歩んでいるんだと」

「ああ、そうだ。例え無駄で歪んだ考えでも、最終的には自分の道を行くんだ。でもね、人って結局何て言おうと、一人っきりで生きられる訳が無いだろう?そんな自分を形成していく過程で、一番近しいものは家族だ」

元就は名前の頭を撫でた。

「家族なんだから、弱い処でも、甘えでも、何でも見せてくれればいいんだよ」

その言葉は名前が蓋をした心を優しく開けた。じわじわと全身に染み渡って爪先に達した時、夢中で元就の腕を取って頬に寄せた。今出来る名前の精一杯の甘え方だった。元就もされるがままに名前の頬を撫でる。

「同じ考えを持つ、歩む道が重なる者同士なら、それは大きな力となるでしょう。三兄弟にはそうあって欲しいと、私は父から学んだのですよ」

背後の隆景は、名前を抱く腕に少し力を込めた。隆景も並々ならぬ思いを持って、毛利に尽くしているのだろう。今ならわかる。
名前は元就とは反対の手で隆景の手を取り、逆の頬に寄せて、両頬を父子の手で包んだ。

「ただいま、元就さん、隆景さん。隅っこに居る隆元さんに元春さんも」

「お帰り名前」

「おかえりなさい」

「名前、お帰り」

「よく無事で帰ってくれた」

この場に居る皆が皆、今この時心が通った気がした。例え離れようとも、思いは繋がっている。名前は安堵感に包まれた。自分の家は此処だけだと。

暫く互いに雰囲気に浸って居たが、名前は考えていたことを切り出した。

「元就さん、帰ってきて早々えらいことやらかした身の上承知で、お願いがあります」

「なんだい、久々に帰ってきたんだ。沢山甘えてくれ」

「私は旅先で沢山の方々と出会いました。皆さん其々執念を持って、戦っていました。でも、今度は戦抜きで皆さんの元を訪ねたいんです。…直ぐにまた出ていってよろしいでしょうか?」

帰宅前から考えていたことだった。旅先で多くの武士に出会い、己が信念を貫き、はたまた誰かの為に戦っていた。名前は彼等の道を共に歩んでみたいと思うことはあったが、違うことが今わかった。それならより人物を理解していてあげたいと思ったのだ。帰ってきて皆から人との温かみを学んだから、もう一度したいと考え直せたのだった。
元就や隆景等は皆が笑顔で即答した。

「駄目」

「いけません」

「ええぇ今の話の流れで?!」

つい突っ込みも入れたくなるものだった。今しがた甘えろと言ったばかりでは無いか。唖然とする名前
他所に、元就と隆景は目を光らせる。

「どうやら道中、悪い男達に誑かされた様だからね…。折角帰って来たんだから、行くにしてももう少し先。これ以上接触すれば、雑賀孫市あたりは大変危険だろうね」

「大丈夫ですよ、根はいい方です。普段は破廉恥な事しかしてきませんが。何で知って…」

「ははは、よし、矢の如く孫市を折ろう」

「聞けば大谷吉継と湯浴みを共にしたとか。許しません、断じて。私もまだ一緒に入ったことが無いと言うのに」

「何で二人は旅先の事知ってるんですか?!というか隆景さんと一緒に入りませんよ!」

「家族とは入れず、他所の男とは入れるのですか?」

「そ、それは…というか、よくよく見てみたら何で私隆景さんの腕の中に収まっているんですかね…?もういい年なのに、恥かしい!離してー!」

「聞けぬ願いです。行くなら私も共に参ります」

隆景は胸に名前を引き寄せて肩に頭を乗せた。名前は子どものような自分が嫌でこういうことはさせたくないのだが、やめる気は無いらしく。隆元、元春もとうとう寄って来て名前を行かせまいと説き伏せ始めた。結局、名前よりも元就等が子離れが出来ていないだけだった。
…やっぱひっそり出てこう。一人も大切だ。好き勝手されながらそう誓った。

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元就と隆景の3Pのリクエスト、白ver.です。
全然その要素が無くて申し訳ありません。
ありがとうございました。

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