「眠い、とっても眠い…」
「ふあ…」
「ふあああ。もらい欠伸しちゃいました。隆景さんが欠伸なんて珍しいですね」
「何を言っているのです、昨日は共に一夜を過ごしたというのに」
「誤解を与えるような言い方しないで下さいね?昨日は奇策が思いついたのなんだので元就さんの部屋に重臣が収集されたんですよね?」
「ええ…奇策という名の歴史語りな一夜でした」
「あんな真っ暗な中、蝋燭の灯しだけで…途中から策にかかった者の末路の話に。百物語級のおっかなさでしたよ」
「興味深かったですが、蝋燭に照らされる父上の笑顔が忘れられません」
「本当です…生えてきた白い髭がいい味だして。もう怖くて怖くて。解放された後も全然眠れなかったんですから」
「ほほう、ではほぼ寝ていないということですか。お気の毒な事です」
「…なんで楽しそうに言うんですか」
「いえいえ滅相もない。今晩もきっと思い出しては震えて眠れないのでしょうねえ」
「やっぱり人の不幸を凄く楽しんでる!やめて下さいよ!また元就さんの顔がぐるぐると!」
「(父上の顔の方が怖いんですね)ところで、貴女からの先日の戦の報告がまだなのですが、どうなっておりますか?」
「…しまった、また忘れてた」
「成る程、貴女は余程私からの折檻がお好きと見ました。腕が鳴ります」
「ひぃ!ごめんなさい申し訳ありませんだって昨日夜行こうと思ったら元就さんが!」
「戦後すぐに来るのが望ましいと何度も言っていますよね。 そうだ、折角ですから日頃何も考えずに突っ走っていくのを矯正しましょう。戦略書をみっちり読み聞かせて差し上げます」
「いやああああ次回から必ずすぐ来ますから、今日はとても眠くて頭に入りませんし!ご勘弁を!」
「言い訳は結構です」
すらりと持っていた本を喉元に突き付け、そのまま顎を掬い上げられて、言った。
「夜に私の部屋に来なさい。今晩も、寝かせませんよ」
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一人が怖いなら時を共に過ごす事くらいできる
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