そわそわ。きょろきょろ。
中学になったときもそうだったがやはり高校生になっても大体のところは変わらないらしい。みんながみんな、友達作りに躍起になる。いち早くつるむ相手を見つけてこの学校という空間に馴染まなければいけない。まるで社会を縮図したようなこの場所が嫌いだ。折角の子供なんだ、今のうちから厳しく忙しい世の真似事なんてしなくていいのに。…眠いから言ってることおかしくてもご愛嬌ということにしといてくれ。
心中穏やかでない戦場…いや教室から抜け出した。いやー危ない、中二発言するところだったぞ、しっかりしろ俺。
で、校舎裏らしい(建物が大きすぎて何処までが校舎なのかわからなかった)場所で草をくわえて寝転がる。うおえ、まずっ。因みに俺は半端ない方向音痴である。あ、きいてない、そうですか。
盛大な独り言をしていると(心の中で)虚しく…いや、ちげーし、虚しくとかないし勘違いとか勘弁……虚し、くない。
「だって俺にはチョロ助がいるしな」
見渡さなくてもずっと一緒にいる。大丈夫、俺はひとりじゃない。それにチョロ助一号から数えていけば友達100人だって楽勝じゃないか、好きだチョロ助結婚してくれ。
意味のわからない戯言がぐわんぐわんと頭を回る。もういい、なんでもいいし考えるのめんどい。
「年中アパシーひゃっほー」
しまった心の声が漏れてしまった。ちょ、誰もみてないよな。これは恥ずかしいぞ。
自分の奇妙な発言をきいた者がいないかと辺りを見渡して確認する。
「なん…だと…っ」
本日二度目のマイ決めゼリフである。恥じらい?知らん。余程この学園は俺を驚かせたいようだ。
首を左右にぶるんぶるんしてみつけたのは犬。じーっと俺を見つめ微動だにしない。それも聞いて驚け、ピンクのわんこだ!あれ…なんか理事長思い出して涙出そう。
「おいわんこ、もしかして俺の独り言きいてたか?もしそうなら忘れろ、今すぐにだ、ほら消せ今消せ忘れ去れ!あとなんでピンクなんだ!もふもふするぞ!」
八つ当たりに怒鳴りながら目尻の涙を拭う。よし、涙と共に最大の敵も脳内から払拭した。うんもう大丈夫。
「おいわんこ…お前ひいてんじゃねーよ」
俺の突然の罵倒に犬は若干、いやだいぶひいている…ような気がする。言い掛かり?そうだよ。文句あっか。
「…まぁ、いいけど」
ひかれたって嫌われたって構わない。だって俺には犬の気持ちなんてわからないし犬語も教養してないから文句いわれても理解できない。陰口も聞かなきゃいいのだ。
「お前と友達になれそう」
チョロ助もお前も喋らないもんな。安心する。