「これは夢だな、そうか、そうに違いない。はは、おやすみ」
俺はどこにでもいるただの中学生である。そして男でもある。二次元に行ったこともなければ、宇宙人が攻めてきたことも魔法使いと会ったこともない、つまり一般人の極みであるわけだ。少し違うところといえば友人がひとりもいないということだけだろう。だがそれがどうした、大した問題じゃないだろう?なんたって俺は孤高の戦士だからな!…知ってるか、こういうのを中二病っていうんだ。しかし残念だったな、俺はもう中三なんだぜ。
話が逸れてしまった。言いたいことはつまり俺が普通だということで。(おーけい、反論は認めない。)家も成績もそこそこで取り敢えずは不自由もなく今まで生きてきた、つもりなのだが昨晩徹夜でゲームをしたいがために洗面台という味方をつけて睡魔と懸命に戦っている最中にそれは起こった。
「くそっ…悪魔めぇ!俺を眠らせようなんて…だが俺はお前には屈しない!必ず打ち勝ってやるぜ!」
テラ中二くせぇ、なんて思いながらもイタい台詞は止まらない。夜中のテンションとは怖いものだ。冷たい水を掬って顔を勢いよく洗う。あ、いてっ水が目に入ったぞ。
「あーこんにゃろ悪魔め」
目を指で擦っていると何故か急にさっと頬に一直線の赤い線が浮かんだ。
「ん、お?なんだこれ、血?」
つーっと血が滴り落ちて白い洗面台に赤い模様をつくる。なにがあった。
顔を上げて鏡で自分の顔を見つめる。すっげ、血だ。
「…なんか俺かっこい…かも…中二くせぇ」
遂に声に出してしまった中二発言と感想に笑い出してしまいそうになったが、鏡の中、いや鏡に映った自分の回りを飛び回る沢山の小さな物体に気付いて言葉を失う。
「うそ…虫とか勘弁」
ぎゃーとかうわーとかきゅえっとか叫びながら(心の中で)一直線に自分の部屋に帰ってベッドに潜り込んだ。虫とか滅べ。死滅しろ。
顔をちょいと布団からだすと目の前に沢山の黒い物体。ちょっマジかよ、俺を殺す気か。もういやだ寝てしまおう。
そして一行目の台詞に繋がる。
以上が再現ドラマだ。頭の中だけのな。
寝る前の俺は完全にいかれていた、自覚があるんだがごちゃごちゃいうなよ。はは、テラ独り語り…別に虚しくねぇし。
また逸れた。軌道修正しよう。あの黒い物体、実は虫じゃなかったのだ。裸眼状態で見たから黒い虫に見えただけで、眼鏡をかけて見ると今まで見たことない生き物だった。それも見える人と見えない人にわかれている。俺は見えるが、ぱぱんとままんには見えないらしい。なんてこった。
こいつらはなんなんだろう。
「…取り敢えず、お前等の名前はチョロ助な」
面倒になって、考えるのをやめた。どうでもいいや。
チョロ助に囲まれながら学校への道を進む。今日から期末テストなんだ。