全身で拒否を表していたのも虚しく、シャツの襟を捕まれてずるずると、途中で出会った生徒達の十人十色の反応に辱められながら寮の玄関まで引きずり出され、寮の裏にあった古びた扉の前まで連れてこられた。本当に死にたい、だがその前にこのピエロを潰してやる、と心に強く誓う。
明日からは多分普通の学園生活は送れないだろう。もう引きこもってもいいレベルだと思うんだ。全部お前のせいだからなリジス!

「おや、何故泣いているんですか?」

…ってめぇのせいだって言ってんだろうが!!叫びそうになる口を噤んで、代わりに涙が付属した目で睨んでやった。効果は無いようだ。おやおや怖いですねぇ、とか笑いながらいうピエロの顔面に一発入れてやりたい。そしてこの世から消えてくれると嬉しいです。
俺が脳内で理事長殺害計画を練っているなんて知らずに(多分ばれてないはずだ)鍵を取り出したピエロに疑問を抱く。

「さあ行きますよ」

え、何処に…いぎゃぁっ!!
以上俺の心の中の声をお送りしました。じゃなくて違うばか、俺ってばど阿呆さん☆…うえっ、気持ち悪い吐きそう。取り敢えず落ち着いてください俺。
混乱極める心の中はさておき、俺は思い出したのだ、寝不足の理由を。

「もう…逝かなきゃだめですか」

「行ったほうがいいと思いますよ?」

飄々と言ってのけるピエロが悪魔に見える。逝ったほうがいいとかお前はそんなに俺のことを殺したいのか、お前が俺に対して行った様々な仕打ちを考えると俺の暴挙なんて蚊が人の血を吸うよりも軽いものじゃないか。いやむかつくけどね、痒いし。

「嫌です」

「ダメです」

即答である。俺が地面にへばり付いて抵抗しようと考えているうちにがちゃん、と錠の音。処刑へのカウントダウンが始まった、そう思い逃げだそうとしたがすぐさま襟を捕まえられて再び引きづられる。お前は俺を何だと思ってるんだ。聞きたかったけれど今はそれどころじゃない。

「すぐに着きますから、大人しくしててくださいね」

「嫌です」

「…そうですか」

床と体が擦れる感覚がなくなったと思ったら理事長はぱっと俺の襟を離した。なんだ、もう許してくれたの?意外とあっさりしてるけど、実は心優しいところもあるんだな。そう思い直したのも束の間、理事長が何か唱えて指を鳴らした瞬間に巨大なスライムみたいな生物が俺を飲み込んだ。う…え、なにこれまじいみわかんない。動揺の余り叫び声さえでない、舌も回らないとは相当だ。

「これで持ち運びが楽になりました」

外から声がする。俺の視界は真っ暗で何も見えないが、外側からはどうなんだろうか。もし中が見えているんなら俺の間抜け面を拝まれてしまう。急いで顔を隠すための手を動かしたのだがぬるっとした感覚に全身が強張る。錯乱して気付かなかったが体中が何かの液体で濡れていた。多分この生物の体液だろう、綺麗好きの自覚がある俺にはそれは余りにも堪え難いものだった。



「着きましたよ」

その声にショックで遠退き始めていた意識が戻って来る。着いたのか、処刑場に、そう思っても先程のように喚きはしない。この汚い状態が俺にとっては死刑と変わらない程の拷問だ。もう勝手にしてくれよ。
ドアの開く音の後、ざわざわとした数人の声と聞きたくないピエロの声がする。何を言っているか解らないのは、きっと俺が放心状態だからだろう。

ぽん、と間の抜けた音と同時に視界がクリアになった。思いっ切り尻餅をついたが今はそんなこと気にならない。

「…何処」

俺がいたのは教室だった。生徒らしい男女が俺を不審そうに見遣っている。意味が解らず隣に立っている理事長に視線を移すと奴はにやぁとしながら言った。

「ようこそ、祓魔塾へ」




異様にむかついたから汚れたまま飛びついてやろうとしたが、それより先に傘の先端で思いっ切り鳩尾に打撃を与えられた。もう死にたい。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -