あれから数日経ったが未だに理事長こと死神が俺の元を訪れることはなかった。何故だ?あ、もしかして俺はもう死の危機を回避したのかもしれない、リジスもそう何日も怒ってられないだろし、そう思うと体が軽くなったような気がした。今なら飛べる、大空を羽ばたけるぞ!部屋の中で両手を上下に振って鳥の真似をしてみた、やべっ楽しい。テンションが何故かうなぎ登りした俺は先程の動作に走り回るという動きを加えた、どたばた煩いかもしれない。端からみるとただのとち狂った危ない奴だが心配することはないんだ。なぜならドアの鍵はロックしてるし窓にもカーテンを引いている。因みに俺はカーテンを開けたことないよ。だって眩しいし外の音が聞こえるだろ?万年引きこもり願望を持った俺には不必要なものだ。

気分が最高潮まで高まって遂にはあの理事長との対面が夢だったのかもしれないとまで思いだした俺は叫ぶ。

「生きててよかったー!」

「そうですね☆」

…え。闖入者の声が脳に刺さって思考が停止したために思いっ切り本棚に突っ込んでしまった。うわっいってぇ!!本が何冊も頭に降ってきた。

「沢山本がありますね。読書がお好きなんですか?」

ちげーだろ!まず心配しろよ、大丈夫ですかぐらい言ってみせろ!いや、実際本は好きだけどね。そこだけは正しいです。
心の中では罵詈雑言の嵐を巻き起こしているが決して表には出さない、だって怖いもん。あ、もんとかいっちゃったよ気持ち悪い。俺は今どんな顔をしているのだろうか。

「墜落した鳥のような顔をしてますよ」

なにこいつむかつくんだけど、いくら温厚な俺でも怒るときは怒るんだよ?うおりゃあ、やんのかこらぁ、とか言っちゃうかもしれない。いや違う今はこんなこと言ってる場合じゃないんだ。
痛む顔面と頭に気を遣りながら何故か俺のテリトリーに無断で侵入してきた不届き者を落ち着いて確認してみる。うわっ本当に居る!

「お久しぶりです。もっと早くに迎えに来るつもりだったのですが私も多忙な身でしてね。お元気そうで何よりです」

別に迎えとか望んでないんで来なくていいし、寧ろ働き過ぎて過労死すれば幸せです、俺が。それに元気じゃないです。毎晩あなたが俺のこと殺しに来るんじゃないかと思うと寝れませんでした、ふざけんなよピエロ。というかこいついつから居たの?手に鍵を持ってるからスペアで入ってきたのはわかるけどいつからここで俺の行動見てたの?ちょっ、恥ずかしいんだけど。
勇気を振り絞って会話を持ち掛けてみる。

「あの…」

「なんでしょう」

「…いつから居たんですか」

「貴方が鳥の真似をしながら走りはじめたところからです」

殆ど最初からいたんじゃねーか!言えよ!…いや、まずなんで気付かなかったの、俺。重傷じゃんか。
先程までの自分の行動を思い出して居た堪れない気持ちになる。穴があったらリジスを埋めた後、ベットに潜り込むに違いない。

「郷崎くん」

俺が頭を抱えていると今度は本ではなく声が降ってきた。
素直に顔をあげてみると、理事長がいつの間にか近付いてきていて俺に手を差し出していた。それはもう楽しそうな、胡散臭さが張り付いた笑顔で。

「さあ、行きましょう」




差し出されたその手を思いっ切り叩いたら傘で数回叩かれた。痛いです。訴えてやる。
(そんな笑顔に、絶対騙されてなんかやらない)




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