一言でいうならば、理解不能。え、この人何言ってんの?悪魔?虚無界?青焔魔?塾に入れ?頭大丈夫?悪魔とか…中学の頃は信じてたよ、でもあれは中二病にかかっていたからであって脱中二した今の俺には信じ難いもの、のはずだ。…騙されないからな!

「郷崎くん、私の話を聞いてますか?」

途中から聞いてません、ちなみにあなたの入学式祝辞も聞いてません、ごめんなさい。悪魔見えるなら塾に入りなさい、としか聞いてなかったです。意味わからんです。でも俺悪くない。だってお世辞にも趣味のよろしくない理事長室の派手なソファに座らされていきなり悪魔の話されても唖然とするじゃないか。やっぱりラスボスに相応しいなこのピエロ。
理事長の質問にだんまりしていると盛大に溜息をつかれてしまった。よしいいぞ、そのまま肺の酸素を全部吐き出して数分呼吸を止めろ!そしたら俺が幸せになれるはずだ。
そんな俺の願いなんて軽く無視して理事長が俺の目をじっとみる。うわっやめてこわい。

「いいですか、悪魔はいます。貴方の回りにいるその魍魎は菌類に憑依して暗く陰気で不衛生な場所や人に群がるタイプです。悪魔としては最下級ですが」

「なん…だと…っ」

聞き捨てならんことをさらっと言ったなリジス。あ、リジスっていうのは俺にとっては"理事長"が"ラスボス"だからそのふたつからそれぞれ文字を抜き取ってくっつけたあだ名だ。ネーミングセンス?知らん、どっかに落としてきたかもしれない。いや違う今はこんなことを長々言ってる場合じゃないんだ。
話の途中で突然口を開いた俺に少し驚いた様子の理事長はどうかしましたか、と不思議そうに問いかけてきた。どうしたもこうしたもないぞ。

「俺は不衛生なのか…!暗くて陰気なのは認めるが」

「認めちゃうんですね」

「ああ勿論だ」

自分が明るくて陽気だなんて自覚は更々ない。絶対有り得ないしそんなうふふな人間なら趣味は独り言ですなんて心の中で自己紹介しないはずだ。だがしかし、不衛生とは心外すぎる。毎晩入るのは勿論のこと、俺は朝起きてすぐにも家に帰ってきた時にだって風呂に入るんだ。毎日1回1時間以上が当たり前だから水道代が半端なかったんだぞ。そんな俺が不衛生…だなんて、有り得ない、泣きたい死にたい。

俺が頭をフル回転して最終的に暗い方向へ考えをまとめようとしたところで理事長が腹を抱えて笑っているのに気付いた。なんだこいつ頭大丈夫か?

「いやぁ面白いです。取り敢えず死んではいけませんよ☆」

「え、なんで」

「心の声が駄々漏れです」

そんな馬鹿な…!俺としたことがあまりのショックにガードが甘くなっていたらしい。なんたる失敗。取り敢えずどこまで漏れてたんだろう、頭大丈夫か、を聞かれてたら俺はもうおしまいだ。チョロ助、今までありがとう!

「郷崎くん」

リジスの声が俺を現実に呼び戻す。あ、リジスっていうのは…もういい?大事なことだから二回言いましたみたいな…そっか余計なお世話だよな、すまん。
視線を明後日の方向からリジスへと戻す。あ、やっぱこわい。

「貴方を気に入りました。是が非でも塾に入ってもらいます」

試してみないとわからないの精神で言った、嫌です、は聞き入れてもらえなかった。頼むから笑わないでくれ、死にたくなるだろ!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -