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『ENEMY』米+威

昔からイギリスの兄達とは仲が悪かった。ひとつ知っててほしいのは先に敵意を向けたのが彼らだということ。会うことが極端に少ないスコットや俺と会うと完全無視を決め込むアイルはまだしも、俺が特に苦手、というか面倒だなと思うのは以外にもあの明るいウェールズだったりする。彼は何がそんなに心配なのか不思議になるくらい過保護で、よくイギリスに付いて回っている。その間はウェールズとそこそこ仲の良い、それに加えイギリスに害のない国でないと近寄れないほど閉鎖的な世界が作り上げられていて、俺やフランスなんかは絶対近寄れない。守られている側のイギリスは全く気付いてないみたいだけどね。

誰もいなかったはずの廊下でふと後ろに不機嫌そうな気配を感じて振り返る。

「…何か用かい?ウェールズ」

ああほらやっぱり来た。まるでセンサーじゃないか!目の前の険しい顔をした彼は何故だか俺に対してだけはいつものけらけらした様子からは想像もつかないほど厳しい。目が合うだけで俺を嫌悪するぐらいだ。
イギリスとよく似たその顔をじっと見返し、応えを待つ。

「アメリカァ、てめェこそイングランドに何の用だ」

「書類を届けに来ただけさ」

「なら俺が届ける。だから今すぐここから消えてくれ」

さっさと書類を渡せと促す言葉に間髪入れず「えーやだよー」と応えると、彼は更に不機嫌を露にした。本当に気が短いなぁ。俺は笑顔で応えてあげよう。

今にもお互い銃を抜きそうな空気の中、先に口を開いたのは彼の方だ。

「お前なんかにやらない」

「……」

「あれは、俺等のだ」

堂々とした威圧的な宣言。反論は許さないという雰囲気の彼は、いや彼らはきっと、こうやって何十年、何百年と大事な弟を守ってきたんだろう。俺から見れば守るというより隠すというほうが正しいと思うけどね。

ウェールズは黙って突っ立っていた俺の手からイギリス宛の書類をそれはもう乱暴にかっさらって 「帰れ」と再度言い放ち、さっさとイギリスのいる控え室の中に消えていってしまった。彼の命令通りに動くのも癪でその場を動かずにいると部屋の中から楽しげな会話が聞こえてきた。今日の夕食は和食にするか中華にするかで揉めているらしく、「春巻天津餃子炒飯ィ!!」なんていうウェールズの叫び声が廊下にまで漏れてきて、虚しさを引き立てる。居た堪れなくなって、踵を返すと「ならもうアイル兄さんの手料理で決定!」というイギリスの声まで聞こえてしまってそれはもう泣いてしまいそうだった。


後悔は想像することは出来ても、予知することは出来ない。もし俺が1776年のあの雨の日に悲しむ彼に銃先を向けなければ、素直じゃない不器用な彼にに対して家族愛や友情以外の思いを抱かなければ、もしかしたら自分もあの楽しげな輪に入ることが出来たのではと涙を溜めてひとり思った。









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