※平安時代設定
というか源氏物語パロ
この頃の女性は身分が高い程、外に迂闊に出れない
「なんてひどい風…」
野分がひどい日のこと。
荒れ狂う激しい風に、院の人々も気をとられているご様子でした。
お仕えする女房も、非常に慌ただしく動き回ります。
「風介さま、奥にお下がりください。外から御姿が見えてしまいますわ」
「ええ…。可哀想に、手入れしたすっかり草花も台無しにね。
……きゃあ!」
妻戸がバタンと音をたて、風に煽られ開く。
「嫌だわ、これでは、外から見通し状態だわ。
… あら?そこに誰かいるのですか?」
誰かが動く気配がして、風介は立ち止まる。
すると、草花の中から猫が飛び出してきたのです。
「こんな、嵐の日に…。あら、赤い鈴をつけてるわ、どなたかの飼い猫かしら?」
そっと猫を撫でる。
とても愛らしく鳴くものだから、風介は気にってしまいました。
「ご主人が見つかるまで、私のところにおいでなさい」
そういって奥に連れていってしまいました。
…非常に美しい花吹雪が、その後ろ姿を追いかけて行くようでした。
嵐から、数日経ったある日、猫の鈴にお文がつけられているのに気づきました。
「先日はこのような手紙はなかったはずなのに…」
そっと開くと、そこには恋の歌が書かれてありました。
他所に見て折らぬ嘆きはしげれども、名残恋しき花の夕影
(遠くから見るばかりで手折ることのできぬ悲しみは深いけれど、
夕明かりで見た花の美しさが忘れられない)
「…………」
荒々しい男の筆跡でした。
どうやらあの嵐の日に姿を見られてしまったようなのです。
「(いけない…主上に怒られてしまうわ)」
おそらく、手紙のお方は猫の飼い主なのでしょう。
しかし、名前は書かれていないのです。
お文を返したくても、猫を返すにあたっても、どなたかわからないから、どうしようもありません。
「(…このまま待てば、きっとまたお文が届くでしょう)」
その時は、姿を見たことを口外しないように伝えなければならない、と風介は思いました。
「小侍従、主上のお留守に、風の君に会わせていただけませんか。」
南雲は風介のお仕えの人の元に通い続けていました。
一目会わせてくれないかと、必死に頼み込んでいたのです。
一度だけ、嵐の日に見たお美しい御姿が忘れられなくて。
「恐ろしいことを!風介さまは帝の奥方。今更他の方に縁付くわけにもまいりません」
「身分違いなのは重々承知しています。しかしこの胸の内の思いは押さえきれません。一目見るだけでよいのです」
「…………」
何度通い詰める南雲に小侍従はのされてしまいました。
「では今日の祭りの夜に…女房たちも見物に出て、人も少なくなるでしょう。
でも絶対に手出しなどはしないでくださいね」
「お許しに…、感謝します。もちろん承知しておりますことよ」
そう言ってそのまま風介の元に。
静まりかえった深夜、足音だけが響きます。
南雲はそっと彼女についていき、風介の寝床に訪れました。
「(ここにあの方が…)」
そっと暖簾をめくると、可憐な姿でお眠りになっているのです。
「(なんと美しい)」
そう思い、風の君を引き寄せなさいます。
風介はうっすらと目を開きました。
「まあ、殿?今日は早いお帰りですこと…………っ!?」
漂う香のかおりが殿のものでないことに気づきます。
「風の君……」
「どなたです、あなたは!ああ、誰かいませんか…」
(^o^){続きはあなたの頭の中に