俺はこっそりと手の中のピンクの錠剤を見つめていた。
見るからに怪しげなそれは、いわゆる媚薬というやつで、グランの部屋から拝借してきたものである。



「(こんなものに頼ろうとしている俺も、どうかしているか…)」

元々行動の発端は、意気地無しの俺にある。

簡潔に言うと、涼野と初体験、つまりセックスがしたいのだが、言い出せないのだ。

彼とは十年来の付き合いで、恋人であると同時に友達であり、家族でもある。
付き合っているとはいえ、そのようなことを言い出せる雰囲気ではない。

おまけに男同士だから、尚更言いにくいのだ。


「…涼野、」

意を決してコタツの中でゴロゴロする彼の名前をよぶ。

「飴やるよ」

そう言うと涼野はコタツから抜け出し、するすると俺に近づいた。

俺の服をひっぱる彼に"アップルキャンディー"を渡す。
凉野は嬉しそうに口にいれた。

「(可愛い顔して、まあ…)」

幸せそうな彼の顔に、思わず口が緩む。

あっという間に口の中のキャンディーはなくなったようで凉野は、
もう一つちょうだい、と催促するように腕に頬擦りする。

「口、あけて」

そう言って俺は今度はレモンキャンディーの包みを剥く。
凉野は目をつむり、大きく口をあけた。

真ん丸いキャンディーを、あの錠剤と一緒に放りこんだ。

「!?」

凉野が目を瞬時に開け、こちらを見る。

用心深い彼にどうすれば呑ませることができるかなんて、長年共に過ごしてきた俺には分かりきっていた。
少々手荒だが仕方ない。

俺は自分の口で凉野の唇を塞ぎ、彼を抱き上げると、近くのソファに運んだ。
飲み込んだのを確認して、そっと唇を離してやる。

「何を呑ませた…っ」

息苦しそうな凉野がこちらを睨む。

睨まれても全く怖くない。むしろ性欲が体の奥底からジワジワと染み出してくる。

「寒いだろ、暖めてやるよ」

ガゼルのユニフォームを脱がす。
体のを線を指先でなぞる。
そっと、丁寧に、人形を扱うように大切に。


体がビクンと大袈裟に跳ねる。
ガゼルは、顔を赤くしたまま何も言わず、こちらを見つめていた。

「細いな…
俺の体とは違う」

ガゼルの首に吸い付く。
白い肌に赤い印が映える。
それが面白くて色々なところに、跡をつけた。


お前は俺のものだよ、
まさにそんな俺の独占欲を象徴するようだ。

「な、なにするの…?」

「服脱いでやることなんて、一つしかねえだろ。
…セックス。」

「や、やだ…っひゃぅ!」

力が入らないガゼルから、無理やりズボンと下着を剥ぎ取る。
あらわになった性器に優しく触れてやり、軽い刺激を与える。

「さわら…ない…でっ、
ひ……っ!」

裏筋を引っ掻いたり、握り潰すように強い刺激を与えたりする。

「ばぁーん、熱いよ…
あついの…」

やっと媚薬が効いてきたらしい。
ガゼルの顔は真っ赤で、体をくねらせて初めての快感に悶えていた。

「先走り汁で、
ベッタベタだな…」

「も、もお無理…
でる、出ちゃ…うっ」

「出せよ」

「ひゃ…や、ゃ、
やああぁぁあっ…!!」

ガゼルが射精し、俺の服を汚す。

「あーあ、汚れちゃったな。」

そのまま着ているのは嫌だったので、床に脱ぎ捨てる。

「ごめん、ばーん…」

ガゼルが目を潤ませて、謝ってくる。
慰めるようにおでこに口付けをした。
まあ、別に全然気にしていないのだけど。

その隙にズボンからローションを取りだす。
指先をローションで湿らし、ガゼルの孔に突っ込んだ。

「えっ!?
ばーん、汚い、よ…」

俺の指から逃れようと、しがみついてくる。

「やりにくいから逃げるなよ」

「んぅ…、痛い…っ」

狭い。異物を入れられ、体が押し返そうとしてくる。

ゆっくりと時間をかけて慣らすと、柔らかくなり、指が二本入るようになった。
指をバラバラに動かし、孔を少しずつ広げてゆく。
スムーズに動くようになると、俺は一度指を抜いた。


「…ガゼル、痛かったら言えよ」

「え、な、なに?

………きゃうっ!」

一気にガゼルの後孔に自身を突っ込む。
ガゼルが締め付けてきて、思わず達してしまいそうだった。

ガゼルは痛いとは言わなかったけれど、涙をポロポロと流し、必死に耐えているようだ。

「ガゼル…」

見ていられなくて、俺はガゼルの口を貪った。
いつものような、優しいキスじゃなくて、荒々しい獣のような口づけ。
歯列をなぞり、舌と舌を深く絡め合わせ口内を犯す。
吐息さえも、もう聞こえなかった。
ガゼルも一生懸命応えようとする。

「ふ……んぅ……」

もう堪えきれなくて、ゆるゆると腰を動かした。
浅く突くと、じれったそうに体をうねらせた。

「や、も、もぉ
ちょっと奥…」

「淫乱…。」

「いぃ、から!はやく…っ!ひんっ!」

言われた通りに奥まで腰を進める。
前立腺をピンポイトで突いてやると、ガゼルはひっきりなしに喘ぎ出した。

「ひゃあぁん、ふ、ぁあ」

結合部からパチュパチュと心地よい音がする。
ガゼルが俺に爪をたて、快感に耐える顔は、可愛らしくて、とてもいやらしかった。

ガゼルを起こして膝の上に乗せてやった。
俺の胸に顔を埋め、上目遣いで俺を見つめる。
口からは睡液がたれ、目もトロンとしている。

そんなガゼルがそばにいるのだから、自然に自身が反応してしまう。

「おっきくしないでよ…」

照れるガゼルを抱きしめてやり、動作を再開した。
パンパン、と規則正しい音がなる。
さっきよりも刺激が大きい見たいで、ガゼルは喋ることもできないようだった。


限界が近づいて俺はラストスパートをかける。

「ガゼル、俺、もう…」

「晴矢、私もぃく、いっちゃうよ、あ、ああぁぁあん…っ!」

獣のように腰を打つつけ、精を吐き出す。
続けてガゼルも射精する。

自身を引っこ抜くと精液がだらだらと溢れた。

「ふ、ふぁ…」

ガゼルは余韻に浸っていた。
その姿に俺の性器は反りたち、もう一回、と無抵抗のガゼルを押し倒した。







「いやぁ、昨日は寒くて寝られなかったよね!」

グランが胡散臭い顔で話しかけてくる。
三人俺の部屋のコタツに入る風景は何とも異様である。

「俺はむしろ"熱い"くらいだったけどな」

コタツの中で、ガゼルの強烈な蹴りが入り、俺は声もあげずに突っ伏した。

「そういえば、バーン、」
「何だ」

痛みを堪え、ガゼルを軽く睨みながら答える。

「俺の部屋のお菓子勝手に持っていったでしょ!」

「はぁ?そんなもん持ち出した覚えはねえぞ」

「ピンクのラムネ菓子だよ!もー、新製品で楽しみにしてたのに」

あ、と思い出す。
媚薬としてガゼルに呑ませた奴だ。
ちょっと待て、あれは媚薬じゃなかったのか?
薬の棚から持ち出した筈だし、ラベルも確認したはずだ。

「あれ、薬の棚にあったやつか?」

「そうだよ!誰にも食べられないよう空き瓶にわざわざ移し変えておいたのに…」

ちらりと横を見ると
ガゼルは、あれか、と頷き、美味かったぞと呟いた。

冗談じゃない、あの薬の為にどれだけ悩まされたと思っているんだ。

何も分からず幸せそうにニコニコ笑うガゼル。
ムカついて、腕の中に引き寄せて、淫乱。と耳元で呟いてやった。
無意識に口角が上がる。

ガゼルは耳朶を赤くして俺を睨んでいた。



その後、ノーザンインパクトをお見舞いされてしまったことは言うまでもない。







きみに"僕"を教えてあげる








ストーリー性のないただのエロ小説
エロは読むのは好きだが、書くのは苦手


2010/11/08



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