無口な男

些細な口喧嘩が元でつい吹雪を殺してしまった俺は反省して吹雪の死体から首を切って庭に埋めてやったのだった。

一日目。
変化無し。
吹雪の首を埋めた場所に水をやる。
土が湿ったのを確認した後その場を離れた。

二日目。
変化なし。
再び水をやった後その場を離れた。

三日目。
微かに腐敗臭が漂うようになった。
それを嗅ぎ付けたのか小蝿が群がっている。
再び水をやった後その場を離れた。

四日目。
見た目上の変化は無し。
腐敗臭がひどくなっている。
小蝿の量が尋常じゃない。
再び水をやった後その場を離れた。

五日目。
相変わらず見た目上の変化はなし。
腐敗臭と小蝿も相変わらず。
再び水をやった後その場を離れた。

六日目。
いつものように吹雪の首が眠る場所へ足を運んだ。
漂う腐敗臭に思わず鼻を摘まむ。

「ねえ」

いつになったら出てきてくれるの、の問いに吹雪は答えない。
他にも色々なことを話しかけたのに吹雪は沈黙を保ったままで、全く相手にされない俺は一人で怒り出す。しかし吹雪は何も言わず、何も答えず、沈黙を保ったまま。

もういい。吹雪なんか知らない。そう吐き捨てて、水の代わりに青いペンキを辺りにぶちまけて、俺はそのまま部屋に戻った。

七日目。

「昨日はごめん、俺が悪かった」

深々と頭を下げて謝る。吹雪は何も答えない。

「吹雪の話したいときに話しかけてくれたらいいから。俺、その時まで待つよ」

吹雪は何も答えない。
真っ暗な土の中で吹雪は何を思考しているのだろう。俺のことは許してくれただろうか。それともまだ怒っているのだろうか。
俺には吹雪の考えていることがわからない。吹雪は俺とは違う人間だもの。それでも俺たちは親友だ。いつか吹雪も口をきいてくれるだろう。
その時まで俺は待つよ。毎日お前に水をやり、お前が土の外へ出てくるまで待つよ。
青いペンキの代わりに水をやって部屋へと戻った。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -