小さい頃から演技が上手だね、とよく褒められたのを覚えている。
幼稚園の遊戯会。日常でのごっこ遊び。中学校の文化祭。
ありとあらゆる場で役者になった。
囚われのプリンセスを助ける王子様。悪い魔法使い。お父さんにお兄ちゃん。
時にはカードゲームのモンスターなんかにもなったりして。
どんな役でも、いつもいつも一番演技が上手だった。
周りは当然賞賛の嵐。
今も昔も誉められるのが嬉しくてさ。
27時間毎日年中いつでも演技。
物分かりの良い、類い稀なる孤高の天才フジワラユウスケの役。
周りの奴は当然そんな俺しか知らなかった。
嘘。嘘。嘘。全部虚飾、只の上っ面、馬鹿みたい。

こんな嘘だらけの俺でも認知して下さりますか。
返事は産まれる前から理解してます。
理解しています。
理解しているけれど・・・。

汚れた血統。
純血。純潔。
直系。
おわり。これでぜんぶ、全部終わり。
子孫なんか遺しません。

フジワラユウスケ

指指指。爪先から真直ぐにつたう、つたう。
先にはあなたが。
「吹雪。知っているか」
ぼんやりと、見つめるあなた。
口を開く、俺。
「どんな色もそのままの色でいるためには他の色を受け入れてはいけない。
たとえ1mmたりとも。
白黒赤青黄緑茶、如何なる色においてもそれは同様で、常に他の色を排除し続けなければならない。これは絶対的な事実だ」
木霊する。木霊する。
卑臓の鼓動が。
「俺が黒だとしたらお前は赤。
俺が他の色に染まりたいなんて言うと思ってる?莫迦じゃないか。阿呆らしい。
・・・・・・・・・だからもう俺に構わないでよ…お前なんか大っ嫌いなんだよ…」

触れる、頬、指先、ひやり。
冷たいよ吹雪。
塞がれた口。
苛々。苛々。
鬱憤。鬱憤。

爆発。

さあさあ手をお取りになって。

噛み切る指(ゴリゴリゴリゴリ)
砕く音(*********)塞ぎたくなる耳。
呻き声、叫ぶ声。(嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼)
つたう、うたう。


あなたはそれでもほほえんでいいました。

「ごめん、ね、ふじわ、ら。  僕が、 君をそん、 な 気持ちに させてた、なん、て 」

トラウマ。デジャヴ。
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤。
関節から。
どろどろどろどろどろどろどろみどろ。

指を、押さえて、ほほえむ、あなた。

「・・・なんでなんでなんでなんでなんでなんで嫌だ嫌だ嫌だ厭だなんでなんで逃げてにげてにげないの逃げてよ!!
なんでこんなことされてそこにいるのおかしいよ!頭おかしいよ気違い!狂ってる!」

目の前がぼやけて吹雪の顔が見えなくなる。
視界が赤く染まって何も見えなくなる。
吹雪はまだ頬笑んでいた。
俺を咎めるわけでもなく、罵るわけでもなく。

「なんで・・・なんでそんなに優しくするの・・・なんでだよ・・・こんなひどいことしてるのに・・・意味解んない・・・やっぱりお前おかしいよ・・・」

意気消沈。
後悔公開後悔公開。

不意に、腕が伸びてきた。
優しく、強く。
抱かれた肩。
あたたかかった。

「好きな、人に、優しくするの、って、理由なんかいる、かい?」

浄化しませう。淀んだ中身。
天に落ちて濾過されたし。

もう意味がわからないよ。
なんで俺を拒絶しないの。
なんでまだ好きでいてくれるの。
わからない、わからないよ吹雪。
もう何がしたかったのかさえもわからないよ。
吹雪、俺を好きなら傍にいると言って。
拒絶なんかしないと言って。
役者の俺じゃなくて本当の俺を好きだと言って。


(もしもし医務室ですか。至急止血剤を持ってきて下さい。ひどい怪我人がいるんです)



//メンヘラ藤原に振り回される吹雪


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