「グランには、感情があるの?」
「君は行き成り何を言うんだい…」

名前はペタンと床に座って俺を見ている。彼女の大きな瞳には俺が映っていた。その瞳はとても無機質な物で、何を考えているのかがわからない。彼女は俺に感情があるのかと聞いてきたが俺からすれば名前に感情が有るのか心配になってしまう。しっかりしてよ、俺達と違って人間なんだからさ、嘘だけど。

「グランじゃなくてね、ウルビダさんやコーマさん…他のエイリアの人には感情なんてないんじゃないかなって思ってるの」
「へえ…」

俺を見つめる瞳に、鋭さが増した。無機質なのは変わらないし名前がさっきから何を考えているかは相変わらずわからない、けれど明らかに俺に対して敵意を向けているのだけはわかる。なんでそんな目で俺を見るんだ、なんで、


「ねぇ、どうなの?感情なんてないから中学校を破壊したり無実の人を傷つけたりできるんだよね?」
「…それは、………っ」
「私をここに連れてきたのも気まぐれなんだよね。円堂くん達の所に帰りたいの、円堂くん達は気まぐれなんかじゃなくてちゃんと私を必要としてくれるから」


必要とされる人間で在りたい、と俺が彼女をここに連れて来た日に名前は言っていた。それでも俺が名前を連れてきたのは決して気まぐれなんかじゃないと言えた。それなのに理解をしてくれない。俺が中学校を破壊して仲間を傷つけてきたエイリアだから、敵だから、理解されないと言うことはこんなにも辛く悲しい物だとは思わなかった。理解されたい、もっと彼女の事だって知りたい、なのにそれが出来ない。


「お願いだから、もう帰して…っ」


とうとう名前は感情を抑え切れなくなったのか、小さな声で泣き始めた。…部屋の中央に設置された巨大なモニターにはイプシロン改と雷門イレブンの試合が中継されている。名前も画面に注目する。所詮イプシロンだ、俺は期待なんてしていないし守達がこんな所で負けるはずないと思っているからそれ程気にはしなかったが名前にとっては俺達エイリアは敵なのだ、圧倒的な力を持っていると思っているのだろう。顔は涙で濡れて身体は恐怖でふるふると震えている。…可哀相だと思った、それ故なのか愛しい気持ちが溢れ出してくる。

俺が名前をここに連れてきたのは気まぐれなんかじゃない、愛しいからだ。
泣き止んでくれるのかなんてわからない、震えが止まるかもわからないし悪化させてしまうかもしれない。けれど彼女を抱きしめられずにはいられなかった。





091204/グラン 




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