「私は十代…いや、十代様の肉奴…メス奴隷…んん?…エロ奴隷です、お好きなように」

「なんで言い直した!?しかもそんなに変わらないだろ!」

「だってここ…人目があるし」

「人目が有ってもエロ奴隷なのか…もうお前分かんない、怖い」


俺の目の前で見えないのに何故か見える(多分幻覚)尻尾と耳をぱたぱたさせながら目を輝かせている名前はどうしようもない変態だった。異性である俺にエロ奴隷(しかも何回か言い直してたからもっと酷い)とか言うくらいだから。どうしてこうなったんだ。俺は変態に好かれてしまう様な行動はした事がない。くそっ、なんなんだこれ。本当に名前が怖い。怖すぎる。小さい頃は至って普通の少女だったのに!ちなみにここはレッド寮の食堂で俺と名前以外には明日香、万丈目、翔、剣山に吹雪さんと言った何時もの面子が揃っていた。後はユベルと大徳寺先生も。とは言っても万丈目達は俺達の会話があまりにも異質すぎて遠くの席に座っているが。お願いだからその視線はやめてくれ、後吹雪さんはニヤニヤしないでください。


「十代様はお忘れかも知れませんが、…私は確かに心を奪われたんだよ?」

「途中から敬語飽きてるじゃねーか…あと様付けはやめてくれ、明日香と万丈目の視線が痛い」

「十代が誰も居ないのに如何にもそこには誰かが居るかの様に宙へ話掛けてる姿に惹かれたよ」

「ユベルこの野郎!!!お前の所為じゃねぇか!」


ユベルが最近あまりにも五月蝿いから仕方なく相手になってた所を見られてたのか。変な所を見せてたとか本気で恥ずかしい…って、ん?


「お前変人だろ…」

「変態だよ…」

「………あー、うん。普通の女子は宙に話掛けてる奴には惚れないだろ…あ、お前変態だから仕方ないのかな」

「十代って酷い事を言うよね…でもそれで十代の気が済むのなら私の事を罵ってくれて構わないよ。むしろ罵って欲しいな十代様」

「お前って本当に変態だな!」


『変態』に反応したのか名前は体を震わせながら身を捩っていた。こいつにはやめろって言っても聞かないんだろうな…そろそろやめてくれないかな、万丈目達の座ってる席が物凄く遠く感じる。切ないな、これが変態と関わってしまったが故の距離か。出来れば変態じゃない名前に戻って欲しい。というか変態な幼なじみは正直、辛い。小さい頃から知っているから余計に。なんでこうなったんだろうなー


「あ、でも十代の電波な行動に惹かれたのは嘘。むしろ引く」

「殴っていいか?なぁ殴っていいか?お前に引かれる事は俺の一生の恥だよ畜生!」

「ホントはね、小さい頃からずっと好きだったよ。惚れたきっかけなんて覚えてないけど、好きになったら理由やきっかけなんて関係ないよね」

「え」


食堂が静まり返る。万丈目達の方に視線を向けると先程までの異質な物を見るような視線は止んでいて、むしろ何が起きたのかが分からないと言った表情だ。吹雪さんは相変わらずニヤニヤしていたけど。取り敢えず、俺も分からない。名前が小さい頃から俺の事を好きだったなんて知らなかったぞ。いや俺が鈍感な所為も有るんだろうけど、本気だとは思わなかった。でもこいつは真剣な表情を浮かべているし嘘や冗談だとは思えない。え?え?ちょっと待てよ確かに俺は名前に散々エロ奴隷宣言やら罵ってくれだとか服を目の前で脱がれたりだとか変態行為や冗談を言われ続けてきたけど正直言うと今の真剣なこいつには心を奪われざるを得ない。というか如何にも普通の恋する少女みたいで、たまらない。変態な面には困っていたけど嫌いじゃないしむしろ、名前は好きだけど、アリかよ。ああでも普通に嬉しい、嬉しすぎてちょっとやばい。…と、この沈黙を作り出したのも、破ったのも名前だった。


「でも十代の周りには明日香ちゃんやレイちゃんって言う素敵な女の子達が居るよね。正直二人に比べたら私なんて雌豚以下」

「え…、あ、…は?」

「だから十代は明日香ちゃんかレイちゃんを本命、まぁもしかしたら本命をすっ飛ばしてどっちかと結婚、とかになっちゃうかもだけど…後はもしかしたら他の女の子が愛人二号三号ってなってくかもしれないしさ」

「…………」

「私は十代の肉奴隷、いや、肉便器?うん、十代の性欲を満たしてあげる道具の立場になるよ!十代ってばハーレムだね格好いい!」


…何も言えなかった。ここまで来ると格好いいよ、お前。なんていうか、やっぱり名前とは普通の恋愛が出来ないんだなと理解し、俺はテーブルに頭を打ち付けた。

100327/遊城十代





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