私は愛していた者の手によって沢山のモノを失った。


『お前を幸せにしようとする家族なんていらねぇ』
私には不幸せがお似合いだ、との事で私の両親は鬼柳に惨殺された。それでも不思議なことにあまり悲しいとは思わなかったのが印象に残っている。狂っているなって思った。鬼柳も、私も。


『お前は俺だけに触れられてればいいんだ』
両腕を思い切り踏み潰されて折られた。本当に容赦なく踏み潰されたので骨が滅茶苦茶に折れているんだと思う。死んでしまいそうな痛みには頑張って耐えたのに私の腕は帰ってこない。滑稽だ。

『お前に俺以外は見えなくていいだろ?』
そんな発言により私はスプーンで右目を抉り取られた。痛くて、痛くて痛くて痛くて本当に痛くて死んでしまいそうだった。痛くて泣き叫ぶ私なんかどうでもよさそうに鬼柳は私を押さえつけて左目をも抉ろうとする。だけど私の叫び声で他のダークシグナーの人達が慌てて駆けつけてきてくれて助けてくれた。ルドガーさんとミスティさんが優しく治療してくれたのが嬉しかった。カーリーさんとディマクさんは暴れる鬼柳を一生懸命止めてくれていたらしい。それでも私の右目は見えなくなった。今は治療中だから両目を覆い隠すように包帯が巻かれているから周りは見えない。


それでも、鬼柳を恨むことはできなかった。どれだけ酷い事をされようと、どれだけ酷く罵られ暴力を振られても私は鬼柳を許してしまう。怖いのに、本当は逃げ出したいと思うくらい怖いのに。それでも、私は彼を愛していた。狂っている。私と、……誰が?別に優しく愛されたいなんて贅沢は言わない、きっとこの暴力は鬼柳なりの不器用な愛情表現なんだ、わかっている。チームサティスファクションの時から鬼柳は不器用だったから。ああ、そんな所も凄く愛しいと思っていた。


でもね、私だって夢を見たくなる時だってあるんだよ、鬼柳。
私は巻かれていた包帯をそっと外して瞬きを何度か繰り返す。やっぱり右目は空虚で何も見えない。別にそんな事、もう気にしていないから構わないのだけど。片目しか見えないとやっぱりすごく不安定。バランスが少し取りにくいと思ったけれどそんなのは気にしてはいられない。早く、早く私は夢を見たいんだ。ゆっくり、ゆっくりと階段を上る。と、二階を上がってすぐの所には鬼柳。タイミングが悪いってレベルじゃない。もう鬼柳を見るのが嫌になって私は体を後ろへ倒した




「鬼柳……」

「名前…お前……」


「おやすみなさい、さようなら」


100206/鬼柳京介 ダグナーな彼が好きです





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