コートの外側で何やら揉めている二人を見て小春は声をあげた。
「あら〜、蔵りんじゃない。」
そこにはミルクティーとハチミツが勝負していました。
「やからな、謙也はなんで毎日毎日朝練に遅刻するんや?お前もう中3やで?」
「す、すまん。」
白石…言うことがオカンである。
「ゲッ、もう朝練始まっとるんか!!」
「蔵りんに怒られちゃうわ〜。どないしよ?」
「で、何でユウジと小春まで遅れて来とるんや…?」
二人の顔が青ざめていると、白石が謙也からこちらへ標的を変えていた。
「し、白石落ち着け!コレには深い訳があるんや!」
「じゃあ、俺が納得できる深い訳を教えてもらおか?」
怨念でも漂ってそうな雰囲気を醸し出している。
「あ、あの…。」
そんな空気の中、発言をした立夏はもはやKY(可愛すぎてヤバイ、の略)であろう。
「ん、誰かな?悪いけど今からこの二人に説教せなアカンさかい、用なら後にしてくれへん?」
そこは怒っていてもイケメンスマイル。この甘いマスクに騙されて白石ファンができるのです。
「ご、ゴメンなさい〜。うちが悪いから二人を怒らんといて〜(泣)」
「え、君、どないしたん?」
いきなり泣き始めた立夏に慌てる白石。
非常に珍しい光景に野次馬がワラワラと集まってきた。
「あー、蔵りんが立夏ちゃん泣かせた〜。」
「白石お前ホンマ最低やな。」
さらに自分たちが原因なのに悪ノリして白石を悪役にするお笑いコンビ。
大阪府民の性です。
「あー、どないしよ、この子?えーと立夏ちゃん?何で泣いてるん?この二人が悪くないってどういうことかな?」
「何女の子泣かしとんねん、白石。」
そこで、ヘタレな謙也参戦!
…あまり役に立たないだろう。
「ちょ、とりあえず泣き止んでくれへん?立夏ちゃん?」
「小春ちゃんとユウジセンパイを怒らんといてくれます?」
立夏に涙目&上目遣いで言われるとさすがの白石も顔を赤くして頷いた。
謙也など耳まで真っ赤である。
「やった!!」
その瞬間、泣いていたはずの立夏が満面の笑みで小春たちの方へピースした。
「は?」
さすがの白石もアホ面だが、そこはイケメンパワーで何とかフォロー。
「まんまと引っかかったな、白石。」
「立夏凄いわ〜。」
ニヤニヤ笑うユウジに褒める小春。
「ちょ、君さっきまで泣いてへんかった?」
「えへへ…アレ実は演技なんです。」
「はぁ!?」
あれだけ泣いていたのに演技だと言われてもすぐに納得できないだろう。
「白石…騙されたもん負けやで。今回は負けを認めたり。
なんたって、小春の弟で俺の弟子やからな。」
「なんやてぇーーー!!!?」
ユウジの爆弾発言により白石からテニス部員、一年を除く観客全員が腰を抜かした。
「えへへ、一年の金色立夏です。小春ちゃんの弟で子役の桜井立夏です。」
「それにしても、何で芸名本名にしたんや?」
「だって、この名前が気に入っていますから。」
「ええぇーーー!!!」
キーンコーンカーンコーン
生徒の悲鳴とともにチャイムの音が鳴り響いた。
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