天気のいい暖かい朝、気持ちよく寝ていると誰かの声が聞こえてきた。

「立夏ちゃん、おはよう。はよせな遅刻するで。」

「うぅ〜、こはるちゃん?」

「小春ちゃんやで〜、はよ起きやなユウ君見れへんで〜。」

そう言うと同時にガバッと起き上がった。

「小春ちゃんそれ先に言ってや〜!!」

「だって、立夏ちゃんの寝顔可愛えんやもん。」

「時間ない〜!!」

叫びながらもどんどん用意をしていって、5分後には女子制服を着た可愛らしい男の子が立っていた。

「でも、女子制服ってええん?うち、コレでも男やで?」

そう、どれだけ女子制服が似合っていても本当は男の子。

しかし、四天宝寺中学校は笑いのためなら何でもありなので、小春は可愛い弟のためにわざわざ学校から許可を取っているのだ。

かと言って弟を女の制服で登校させるな。そして、弟ももう少し疑問を持て。

「似合ってるんやからええって。今日も立夏ちゃんは可愛えで?」

「小春ちゃんも可愛えで?」

「やーん、ありがとう立夏ちゃん。」

惚気のような会話を朝からする金色家の長男と次男。両親すらも仲のいい兄弟だと微笑ましげに見ている。

朝からツッコミ不在である。

そして、何故かドアの隙間からこの光景を覗いている姉の姿が…。

「うふふ、朝からおいしい光景ゲット!小春×立夏の近親相姦…!!でも、一氏×立夏もおいしいのよね〜www」

姉は朝から弟たちを見ておなかいっぱいらしい。

弟たちで妄想するな。せめて二次元に留めておけ。

「ほら、ご飯食べて行きましょう、立夏ちゃん?」

「うん!」

それからまたうふふあははと惚気ながら学校へと向かった。

そんな時、緑色のバンダナを見つけた立夏はその人へ向かってタックルをした。

「ユウジセンパイ!!」

「ぐぇっ!?ゲホゲホッ!!」

…相当強くタックルしたらしい。いくらなんでもやり過ぎだ。

「何しよんねん、立夏!!」

「うぅ、ご、ゴメンなさい〜。」

「こら、ユウ君。立夏ちゃん怒ったらアカンやろ?立夏ちゃん謝っとるんやから、許したらな。」

「…次からは気ぃつけろや、立夏。」

ショボーン…と落ち込んだ顔からすぐにパァァァっと輝いた。

「あ、ありがとうユウジセンパイ!」

「(キュンッ!はっ?キュンってなんやねん!俺には小春という人がおるんやぞ!?)あ、ああ。」

「うふふ〜、ユウ君照れてる。

あ、ユウ君に言うの忘れてた。」

いかにも忘れてた、という風に小春は手をポンっと叩いた。

「?何や、小春?」

「今日、立夏ちゃんテニス部に体験入部するから。」

「えっ!?立夏もテニスするんか?」

ユウジのスマイル0円に立夏は頬を染めた。

乙女か!?

「まだ入るとは決めてないけど、小春ちゃんが楽しそうにやっとるからやってみようかな〜、って思っとるんや。」

「ホンマか!?なら、今日は俺がビシバシ鍛えたるわ!!」

「ユウ君〜、まだ入部するとは
決まってへんのやけど…?」

まるで、息子に自分の趣味を教える父親のように目がキラキラしているユウジ。あまりの珍しさに登校中の生徒もチラチラこちらを見ている。

「なら放課後楽しみにしとるでー。小春、いそがな朝練に遅刻するで!!」

「う、うん。立夏ちゃんも部活見に行く?」

引っぱられながらも何とか弟にチャンスをやろうと提案する小春。

「えっ!行ってもええん?」

「もちろんや!な、ユウ君?」

「おう、俺らのお笑いテニス見せたるわ!!」

テニスと小春関係の時にだけ見せるスマイル0円。

コレが一氏ファンができる理由です。

「小春ちゃんとユウジセンパイのテニス楽しみやわ!」

「ほな、行くでー。」

ズルズルと笑顔で引きずられて行く立夏。嬉しいらしい。

「(なんか…立夏ちゃんがMに目覚めんとええんやけど…。)」

その光景を見て弟の将来が不安になった小春でした。





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