俺は君だけを見ていた、それだけは嘘じゃない


俺は今日も足を図書室の方へ動かされる。理由はわかってる。音無に会うためや。何故か毎日会ってしまう。理由なくかわかっとる、でも…。

「白石君はさー、何か悲恋物語とか似合いそうだよね。」

「…それ褒めてるん?」

ホンマに誘っとる、なんて聞きたくなってしまうなんて聞きたくなってしまう。

「えー、だって白石君って彼女に尽くすタイプでしょー?」

「いや、実は彼女作ったことないねん…。」

昔から音無のことしか頭にあらへんかったから。

「なら尚更だよ。彼女に尽くしても彼女の生きられる時間が増えたりはしない。少ないその時間を泣きながら過ごす姿とか綺麗だよねー。」

「また勝手に妄想なんかして…。」

「妄想は根拠のない想像とは失礼だな。根拠ぐらいあるよ。」

「ほー。」

「あ、信じてないでしょ?だって白石君ってあるもののために自分を犠牲にするタイプでしょー、テニスでも。楽しむよりチームへの勝利を一番に考えているからそうかなーって思ったんだけど?」

「…チームへの勝利のために完璧なテニスをするんはアカンか?」

「チームのためって考えるのはいいことだよ。でも自分の本当に大切なものを削ってでもするのはただの馬鹿だよ。」

「大阪府民に馬鹿は禁句やろ?」

見透かされている汚い自分が嫌になり、同時に自分のことをめっちゃ見てくれてることが嬉しい。

「白石君はいつか家族のために、仲間のために、敵のために、そして赤の他人のために本当に大切なものを失うよ。」

「嫌な予言やな。もうちょっと人を元気にするようなこと言われへんのか音無は。」

ホンマによう見とるわ。やのに何でなんやろな…。

「じゃあさ、本気でやりなよ。やりたいだけ全部出してよ、あとなんかないんだよ?妥協なんかしないで、二度目があると思って安心なんかできないよ!?この時は一瞬しかないんだよ!!」

「………ッ!」

「!…ゴメンなさい。ちょっと熱くなりすぎた。あ、頭冷やしてくるね?」

そうやって謙也の元で泣くんやろ?

「ゴメンな音無、もう遅いんや。もうちょっとだけはよ言ってくれたら俺は動けたかもしれへんけど…、」

あの頃が一番幸せやったのに…

「もう、手遅れや。」

もうお前の隣に居ることすらかなわへん。


title…『DOGOD69』より。




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