実らない恋、少しの期待


「わしが承太郎くらい若かったらのう」

ジョースターさんのこの台詞は、一体何度目だろうか。ジョースターさんに「好きだ」と告白する度にそう言って私を軽くあしらう。「わしが二十代の時に会いたかったなぁ」とか「君がもう少し早く生まれていればのう」とか、終いには「承太郎なんかどうじゃ、わしにそっくりだろう」なんて、好きな人に好きな人の孫の承太郎を恋人にと薦められる。いくら顔のパーツが似ていたって、ジョースターさんと承太郎とじゃ中身が全く違うのに。私の好きな人はジョースターさんだもん、と頬を膨らますがジョースターさんはその度に「すまんな」と笑うだけ。一体どうしたら彼は振り向いてくれるのだろう。

「無理無理、もう諦めた方がいいって!」
「失礼ね、ポルナレフ!わからないじゃない!」
「いや、ポルナレフの言う通りだよ、なまえ。君には悪いが、ジョースターさんには妻子がいるし…そこに孫までいる。常識的に考えて、君の恋は実らないですよ」
「花京院くんまで…うぅ」

旅の仲間であるポルナレフと花京院くんが、私の「ジョースターさんが振り向いてくれない」という愚痴に、慰める素振りさえ見せず私に現実を突きつけた。ジョースターさんには妻子がいる、仲間の一人は彼の孫だろう、とわかりきったことを出来るだけ見ないようにしている私に躊躇なくぶつける。そしてジョースターさんと同じく、「承太郎に乗り換えた方がいいですよ」と花京院くんがクールに言い放つ。

「花京院くんまでそんなこと言う…酷い…うわーん!」
「騙されませんよ、嘘泣きしたって」
「…だって酷いじゃない!私はジョースターさんが好きなのに、孫だから承太郎にしろだなんて!」
「おっ、そんならなまえ、俺にするか?」
「だから私はジョースターさんが好きなの!」

花京院くんが読んでいた雑誌を奪い、ポルナレフの顔に叩き込む。花京院くんの後ろのソファーに座る承太郎がため息をつくのが聞こえた。

「承太郎、お前はどうなんだよ!じいちゃんであるジョースターさんが女子高生に言い寄られて」
「どうだって聞かれてもな…俺には関係ねぇ。それに、そういう面倒事には巻き込まれたくねぇぜ」
「承太郎は私を応援してくれるってこと!?」
「全然違うと思いますよ…」

花京院くんの言葉に、私は花京院くんをじろりと睨む。この中には私の恋を応援してくれる人は誰もいないらしい。アヴトゥルさんだってこの前「ジョースターさんを追うのはやめなさい」と私に言った。頼れるのは己の力と魅力のみ。

「ま、ジョースターさんもなまえを傷つけないようになのか…ハッキリ無理だって言わねぇしな」
「ジョースターさんにも、責任はありますね」
「…あ、噂をすればジョースターさん」
「えっ!本当だ!ジョー…っ、きゃ!」

アヴトゥルさんと一緒にホテルのチェックインをして戻ってきたジョースターさんへと駆け寄ろうと立ち上がった時、ぐい、と腰を捕まれそのまま落ちるように花京院くんの太ももの上に座らされた。私の腰に回った腕は、花京院くんの腕らしい。何するの、と聞こうと花京院くんを振り返ると、花京院くんはぐっと私と距離を詰める。

「ちょ、何…!」
「しーっ…こうしたら、ジョースターさんの気持ちが見えるんじゃないかな?」
「えっ…?」

どういうことだろう。花京院くんの言っている意味がわからないまま、私はただポカンと花京院くんを見つめていることしか出来なかった。そうしているうち、ジョースターさんとアヴドゥルさんが私達の側に来る。私と花京院くんに影がかかり、ジョースターさんが「花京院」と私ではなく花京院くんを呼んだ。

「何でしょうか、ジョースターさん」
「君となまえは、そういう関係になったのか?」
「そういう…?あぁ、これですか。いえ、なまえが慌てるものだから滑ってしまって…僕が受け止めただけですよ。ついでに睫毛がついていたので、取ってあげようと」

花京院くんがつらつらと嘘をジョースターさんに話す。ジョースターさんは私をチラ、と見てから小さく「そうか」と呟いた。それから私の手を取り、自分の方へと引き寄せる。勢い余って、ジョースターさんの胸に体を預けると、ジョースターさんの腕が私を抱く。

「ジョースターさん…?」
「…花京院、なまえは女の子だ。あまり過度なスキンシップは止めてくれ」
「ふふ、すみません。ジョースターさん」
「なまえも、もう少し危機感を持たんと」
「はい…」
「そういうジョースターさんは、なまえの腰を抱いたままだけど?」
「はっ!こ、これは!決してそういうんじゃあ…」

慌てるジョースターさんをポルナレフが笑う。アヴドゥルさんと承太郎がやれやれ、とため息をついた。そんな皆を見ていると、花京院くんがこっそり、私に耳打ちをした。

「意外と可能性もあるかも知れないね」
「えっ!?」
「こら、花京院!言ったそばから!」
「別にいいじゃないですか、内緒話くらい」
「ダメなもんはダメじゃ!」

もしかして、と花京院くんの言葉の意味を考える。そんな、まさか、でも少し期待してしまう。

「…ジョースターさん!ヤキモチですか!?」
「何をっ…!そんなわけ…」
「やだなジョースターさんってば!私がジョースターさん以外を好きになるわけないじゃないですかぁ!」
「いや、だから…」
「ジョースターさん、大好きです!」

ぎゅっとジョースターさんの鍛えられた逞しい胸に抱きつく。ジョースターさんは戸惑いながら、仕方ないな、と言う風に私の頭を優しく撫でた。


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老ジョセフ〜
実らない恋を全力で頑張る女の子は書いていて楽しいです。

2016/01/19

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