黒尾とハロウィン

「ハッピー・ハロウィン!」

彼女はそう言いながら練習後の部員達に一つずつ、赤いリボンでラッピングしたクッキーを渡していった。ご丁寧に、クッキーの形は猫である。今日がハロウィンだからか、と笑うと、配り終わった彼女がムッとした顔でこちらを振り返った。

「何よ黒尾・・・」

「別に、何も言ってねぇだろ」

「あんたって何か人を小バカにしてるっていうか・・・くだらないとか思った?」

「いいや、思ってねぇよ」

信用出来ない、と言う彼女に疑いすぎた、と言ってやる。実際、くだらないなんて思っていない。彼女のマメさに、敬服してしまったのだ。つい漏れてしまった笑いで、勘違いされてしまったが。

「黒尾って、女子ってイベント好きだよなー、とか言いそうだし」

「言わねぇって」

「言わなくても思ってそう」

「そんなことないよ、クロもイベント事好きだし」

俺と彼女の言い争い(一方的)を見かねて、研磨がフォローする。それからすかさず、研磨が「クッキー、可愛い。ありがと」と彼女に言った。彼女は研磨の一言で、へら、と嬉しそうに笑う。まるで、俺と接しているときとは別人のようだ。

「研磨ありがと!」

「わざわざ、猫にしたの?」

「うん!型買って来てね、あ、犬もあったから買ってきた」

「そっか」

「だから、犬岡のは、ミックス」

反対側で虎と犬岡のはしゃぐ声が聞こえた。各々嬉しそうに反応する部員達を見て、また笑う。

「黒尾」

「ん?」

「あんたは、喜んでくれないの」

そう言って頬を赤く染める彼女の頭を撫でる。

「ありがとな」

耳まで赤く染まった彼女に悪戯したくなったのは、内緒にしておこう。


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2014/10/24 宙

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