岩泉とハロウィン


「見て、ハロウィン」

「は?」

「だから、ハロウィン」

ほら、と彼女が指差す先には、オレンジ色のカボチャ。魔女を連想するトンガリ帽子が乗せられ、正面には気味の悪い顔がついている。彼女はカボチャを見ながら「ジャック・・・ジャックオランタン!」と手を叩いて笑う。

「日本でもハロウィンのイベント増えてきたよね、ほら、あっちの店にも」

「あー、確かに・・・ハロウィンって、お菓子貰うんだっけ?」

「そんな感じかな。岩泉君は興味ない?ハロウィン」

「別に」

興味も何も、関心すらない。ハロウィンという行事についても、いまいち理解していない。

「岩泉君はイベント事はスルーしそうだもんねぇ」

「ん」

「今年は私が、仕掛けようかな」

「仕掛けるって何だよ」

「んー、秘密」

楽しそうに笑っている彼女を見ると、これ以上聞けなくなる。俺の横を歩きながらまた、「ハロウィン!」と雑貨屋の飾りを指差す彼女を見ながら、ハロウィンの日付を思い出す。確か、10月の最後の日だったはずだ。その日の予定は、まだない。

「岩泉君」

「ん?」

「デートしようか、ハロウィン」

「・・・そうだな」

「ふふ」

私が迎えに行くからね、と言う彼女はとても楽しそう。彼女が仕掛ける秘密は、一体どんな秘密なのか。きっとお菓子は、用意しないほうがいい。


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2014/10/24 宙

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