影山とハロウィン

「トリック・オア・トリート!」

教室に駆け込んできた彼女は、俺の席に来るなりそう言って手を出した。今、なんて言ったんだ、英語か?と頭の中で考えて首を傾げる。そんな俺を見た彼女は手を出したまま項垂れて、ため息をついた。

「な、なんだよ・・・」

「飛雄、ハロウィン知らないの?」

「カボチャのやつか」

「うーん、まぁ、そうなんだけどさぁ・・・」

ちなみに、さっき何て言ったかわかる?と彼女は言う。首を横に振ると彼女は、ニヤリ、と笑った。そんな彼女に嫌な予感がして、彼女から少し、身を反らす。

「直訳すると、悪戯か、おもてなしか。ハロウィン風に意訳すると、」

「・・・」

「お菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ!」

「げっ!?」

彼女が手を伸ばして俺に襲いかかろうとする。慌てて椅子を後ろに引くとゴンッ、と後ろの席の机に背もたれがぶつかった。運良く後ろの席の奴はどこかに行っていて、座っていなかった。

「あっはは!飛雄慌ててる!」

「お前な・・・」

「いたずらは、部活・・・だと大地さんに怒られるから、部活の後!」

「ま、待て!お菓子だろ、確か、」

「えー、あるの?」

「・・・ん」

正確に言うと、お菓子ではない。カバンから取り出したのは、さっき買った紙パックジュース。正直に言うと、間違ったボタンを押して買ってしまった、ジュースだ。

「・・・ジュースじゃん!」

「これしかねぇ」

「ん、まぁ、貰っとく」

「いたずらは、ナシな」

どうしよっかな、と笑う彼女に、小さな悪戯心が芽をだす。さっき、何て言ったんだっけ。

「・・・お菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ」

瞬きを二回して慌てて教室から出ていった彼女に、部活の後、どんな悪戯をしてあげよう。


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2014/10/24 宙

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