01:席替え

「咲々チャァン、何番?」

授業後のHRの席替えで、先にくじを引いた咲々ちゃんに番号を聞く。咲々ちゃんは俺に紙を突き出し見せる。番号は4番だった。4番の隣の席は8番。その数字を引くことが出来れば一番いいのだが、俺にはくじ運ってものがない。箱から適当にくじを引くと19番だった。全く違う番号を引くのはいつものことだ。

「俺は19番だったヨ」

「あ、うん・・・」

咲々ちゃんに俺が引いた番号を告げると、あからさまにガッガリした。毎回毎回同じような反応をする。このあとの俺の行動はわかっているくせに。何がそんなに不安なのか。3年間同じことをしてきた俺が、急に裏切るとでも思っているのだろうか、全く心外だ。

「8番、誰?交換してくれヨ」

俺が声を大きくしてそう言うと、咲々ちゃんは顔を明るくして笑う。小さな声でありがとう、と呟いて、先に自分の番号の席へと机を動かした。俺は無事に8番と交換し、咲々ちゃんの隣へと机を運ぶ。

「いい場所引いたナァ、咲々チャン」

「本当?窓際、暑くない?」

「風が入って良いだろ、それに後ろだしサボってても見えねぇ」

「サボっちゃ、ダメだよ」

ぷく、と頬を膨らませる咲々ちゃん。寝てたらノート見せてネ、と言うと少し黙った後に渋々頷いた。毎回席が変わっても、隣には咲々ちゃんがいる。席が離れるのは学年が変わりクラス替えをした後の、出席番号順に並んでいる時だけだ。その時、横に男が座っていると咲々ちゃんは休み時間の度に俺の側に来ては「早く席替えしたい」と呟いていた。「荒北君の隣がいい」と泣きそうになりながら。

「荒北君、このあと、部活?」

「あぁ、今日は休みだヨ。昨日までギリギリの練習してたから、今日は休息日ってやつ?」

「そうなんだ、じゃあ、」

「んあ、でも・・・」

HR終了のチャイムが鳴る。ガタガタと動き出すクラスメイト。それと程なくして、教室に福チャンが顔を出す。キョロキョロと教室を見渡し、昨日と違う席順に少し戸惑っているようだった。福チャン、と呼ぶとこちらを向いて、教室に入ってくる。隣の咲々ちゃんが「あっ!」と声を上げた。

「3年レギュラーでミーティング。ファミレスで」

「そっかぁ・・・」

咲々ちゃんが残念そうにため息をつく。一緒に帰れると思ったんだけど、とガッガリして、それから俺の横に立った福チャンと目があったのか肩をびくりと震わせた。

「荒北、ミーティングはいつもの場所で行う。10分後、校門に集合だ」

「わかってるって、福チャン」

「席替えしたのか・・・好川、また荒北の隣になったのか」

「へっ!?いや、席は・・・その、あら、荒北君に、」

「咲々チャン、落ち着け」

福チャンに話しかけられ目を泳がせながら答える咲々ちゃん。助けを求めているのか咲々ちゃんは俺と福チャンをチラチラと交互に見ている。

「わざとだよ、なぁ、咲々チャン」

「う、うん」

「また、隣、よろしくな。そんで、明日は一緒に帰ろうぜ」

咲々ちゃんが、嬉しそうに笑った。


01:席替え



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2014/06/09 宙


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