00:プロローグ

あの日、授業をサボって原チャで走ろうとしていた時、男の声と女の声が聞こえた。言い争っているような声に興味半分で声がするほうを覗くと、いかにもかもられそうなちっこい眼鏡の女と自分と似たような不良が二人、そのちっこい女の襟ぐりを掴み上げていた。ぶつかっただのなんだのと、会話が聞こえ、女の方は真っ青な顔をして泣きながらただただ謝っていた。助けたのは、気紛れ。弱いものイジメってのに苛ついたってのもある。でも、俺は無視することも出来た。ただの、気紛れだったんだから。

「荒北君っ」

「アァ?」

「あの、ありがとう・・・」

「うっせ、別にあんたを助けた訳じゃねぇ」

それなのに、何故か助けた女になつかれた。偶然にも同じクラスで、それから俺はよく話しかけられるようになり、その女は俺の側にいるようになった。

「荒北君」

「・・・」

「あの、今日、席替えだから・・・その」

「咲々チャァン、わかってっから」

「あ・・・うんっ!」

何の縁か、3年間ずっと同じクラス。男が苦手らしく、話しかけられたり横に男がいるだけでびくびくと怖がる。それなのに、俺は平気らしい。自分で言うのも何だが、一年の時の俺はクラスの中じゃ男女共々に怖がられていたはずだ。ただあの時助けたから、それだけで俺を「優しい人」と言って心を許している。

「変だよなァ、咲々チャン」

「え?」

「・・・別にィ」

お守りなんてめんどくせぇ、そう思っているのに、3年間ずっと突き放すことが出来ずにいる。それどころか、俺は、

「・・・あり得ねぇんだヨ」


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荒北さん長編です。ノープランで始めてしまいました。


2014/06/08 宙


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