16:互いに

「好き」と呟いた咲々ちゃんは穏やかで、顔を赤く染めながら笑った。新開の仕業だとわかり、教室の外に逃げ出す新開を捕まえ、とりあえず頭突きをくらわせた。咲々ちゃんと顔を合わせるのが何となく気まずくて、教室には戻らず屋上で授業をフケた。何故か新開まで着いてきて、咲々ちゃんの話を俺にする。

「気づいたんだよ、靖友」

「・・・」

「いいのか?咲々に伝えなくて」

「つーか、何で、急にそうなんだよ」

意味わかんねぇ、と呟く。俺が何したって平気な顔をして笑っていたのに、急に真っ赤になって。新開に言われて勘違いしてるだけじゃねぇの、と言うと、新開がそれは本人に言うなよ、と俺に釘を指した。

「傷付くぜ、咲々」

「でも、本当に勘違いかもしんねぇじゃん」

「いや、それはないだろ。俺は靖友が好きなんだろうとは言ってないし、答えを出したのは咲々だからな」

納得がいかない。ついこの前、咲々ちゃんとは友達のままいようと自分で決めたのに、いきなりそんなことになって、じゃあ俺も、と気持ちを切り替えできなかった。けれど、あのまま教室に放っておいた咲々ちゃんを考えると、胸が痛む。泣いてないといいけど、と思いながらも、足は教室に向かない。頭を抱えていると、新開が地面に置いた携帯電話が震えた。

「寿一か・・・俺が授業サボったから怒ってんのかな」

「福チャンが授業中にメールするわけねぇダロ」

「そうだな・・・靖友、寿一からのSOSだ」

「ハァ!?」

保健室にいる、と新開がメールを見ながら俺に言う。福チャンが保健室、という珍しい状況に驚きながら、俺と新開は屋上を後にして保健室に向かった。新開は何で福チャンが保健室にいるのか、という説明はしなかった。ただ、寿一が助けを求めてる、と話す。保健室につき、ドアを開けると、福チャンの背中が見えた。福チャン、と呼ぶと福チャンが振り返る。福チャンの肩越しに見えたのは、涙を流した咲々ちゃんだった。

「新開、荒北は呼んでいないが」

「丁度一緒にいたんだ、靖友も来たほうがいいと思ってな」

「しかし、好川が」

福チャンが咲々ちゃんをチラッと見て、それから俺に「俺では泣かせるばかりでな」と言った。そりゃそうだよ、咲々ちゃんは俺以外の男は苦手なんだから、と言葉には出さず呟いた。

「教室の外でお前を探していた。声をかけたんだが、泣かれてしまって」

「泣いたのは、福チャンのせいじゃないヨォ・・・」

咲々ちゃん、と声をかけると顔を隠しながら咲々ちゃんがごめんなさい、と謝る。何で謝るの、と聞くと、だって、と小さく呟いて黙ってしまった。謝るのは俺のほうだよ、と髪を撫でると、おずおずと顔を上げる。

「何で・・・?」

「咲々ちゃんのこと、放って来ちゃったしね」

「・・・私、フラれたと、思った」

「・・・違うヨ」

そう言うと咲々ちゃんが俺を見ながら、涙を流す。指で擦ってやると恥ずかしそうな顔をしてありがとうと言った。

「本当に、俺の事、好き?」

「好き」

「どういう意味で?」

「えっと、恋愛的な目、で!」

新開に言われたの、と聞くと、首を振った。きっかけだけだよ、と言って、俺の腕の服を握り、ちゃんと自分の答えだから、と呟いた。

「荒北君が、」

「咲々ちゃん、好きだよ」

言われる前に言ってやろうと、咲々ちゃんの言葉を遮った。


16:互いに


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2014/09/20 宙


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