11:余計なお世話

福ちゃんにもらった映画はド定番の恋愛映画のようだった。テレビのCMで見る限り、不治の病に侵されたヒロインとそれを支える主人公といったお涙頂戴のお話。評判はそこそこ、けれど俺にとっては全く興味のない内容だった。咲々ちゃんは、どうなんだろう。やっぱり女の子だから、こういう話が好きなのだろうか。

「・・・」

「映画に行くんですか?」

「あぁ・・・」

部室で福ちゃんにもらったチケットを見ていると、横から泉田が話しかけてくる。今テレビでCMしている映画ですね、と何だか嬉しそうだ。もしかして泉田はこういうのが好きなのか。意外、過ぎて少し引く。

「僕、見たかったんです!」

「あぁー・・・そう」

「意外です、荒北さんが恋愛映画なんて!」

「っせ!つか、声がでかいんだよ!」

泉田の後ろで着替えている新開と東堂をちら、と見る。二人は特にこちらを気にする素振りは見せていない。どうやら聞こえていないようだ。あいつらにバレたら、絶対にからかってくるに違いない。咲々ちゃんと映画どころじゃなくなりそうだ。とはいえ、一緒に行く約束をしたのは良いが、この映画を二人で見るのは何だか気まずい、というか気恥ずかしい。別の映画にすればいい、と言ってもせっかくもらったこのチケットが勿体ない。

「誰と行くんですか?」

「・・・咲々ちゃん」

「デートですか!」

「デ・・・!」

デート、泉田に言われ少し熱が上がる。今まで休みの日に二人で出掛けた事は一度もない。たまに部活が休みの日に放課後ファミレスに寄ったりはしていたたが。デート、という意識は余りしていなかった。ほんの少し、胸の奥にはあったが、相手は咲々ちゃんだ。咲々ちゃんはきっと、そんなふうには思っていない。

「それで好川先輩、嬉しそうだったんですね」

「・・・咲々ちゃんと話したの?」

「はい。少し怖がられてしまいましたが・・・」

笑ってましたから、と泉田が言う。

「ふうん・・・」

「普通に話せましたし、いつもぎこちない笑顔ですけど、今日は自然で、僕も嬉しくなってしまいました」

「・・・」

「あっ、別に深い意味はないですよ!荒北さんの彼女ってわかってますから」

「彼女じゃねぇよ」

泉田にそう言って、顔を伏せる。多分、顔が赤い。楽しみにしている、嬉しそうな咲々ちゃんの顔が想像出来る。泉田がわかるくらい、咲々ちゃんは俺と映画に行くのを、喜んでいるってことなんだろうか。

「靖友、デートだって?」

「それはいいな!好川ちゃんとか?咲々ちゃんとに決まっているか!」

「・・・うるせぇ、どっか行け」

「いいじゃないか、どこに行くんだ?」

新開の問いに泉田が映画だそうです、と答える。勝手に教えるんじゃねぇ、と軽く泉田を小突いた。

「何の映画・・・」

「ワッハッハ!あの映画はカップルで見るのがオススメと聞いたからな!きっと盛り上がっ・・・ん?どうしたのだ、荒北」

「俺、お前に何の映画見に行くか言ってねぇよな・・・」

「ん?それがどう・・・あ」

「尽八・・・」

ようやく納得した。福ちゃんが慣れない事したのも、急に映画のチケットをくれたのも、こいつらのせいだろう。やっぱり言わされてるじゃねぇか。

「新開、てめぇもグルだな・・・?」

「いやぁ・・・靖友の為を思ってだな」

「そ、そうだぞ荒北!新開はお前の為を思って」

「おめさんが言い出したんだろ!」

「どっちでもいいヨォ・・・」

「ひぃ!」


11:余計なお世話



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2014/07/30 宙


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