07:恋愛

放課後、咲々ちゃんは迎えに来た真波と一緒に不安そうな顔をしながらも、おれに「いってきます」と言って教室を出ていった。俺は部活に向かい、咲々ちゃんのことを気にしながら練習をしていた。集中力が散漫、というよりも、回しすぎて福ちゃんにオーバーワークだと言われた。

「・・・チッ、めんどくせ」

練習後、部室で着替えながら咲々ちゃんとのやり取りを思い出す。少し、いじめすぎたかもしれない。咲々ちゃんが不安そうにしていたのに、冷たい態度を取ってしまった。咲々ちゃんが真波の為に「頑張る」と言っているのは、何だか気に食わなかった。気にするくらいなら、止めればいい。真波には適当に言って、咲々ちゃんを行かせないことも、多分出来た。けれど、俺にそんな権利はない。真波は部活が始まり1時間程遅れて来ていた。しっかり俺に「咲々先輩のお陰で補習終わりました」と報告し、「咲々先輩って可愛いですよね」と意味ありげな事まで言っていた。

「・・・ッ、うっぜ!」

「どうした、荒北」

「別にィ!福チャンのことじゃないヨ」

「・・・好川か」

「・・・福チャンに言い当てられるとはネ」

そんなに分かりやすく顔に出ていたのか、と自分を鼻で笑う。福ちゃんは俺にボトルを差し出し、それを俺が受けとると横に座った。何だ、まさか福ちゃんが恋愛相談でもする気なのか。

「喧嘩か」

「してねぇよ」

「そうか・・・」

「・・・福チャァン、無理しなくていいヨ」

慣れない事すんな、と福ちゃんに言い、鞄を持って部室を出る。丁度真波がメニューを終え、部室に帰って来ていた。真波は部室に入るわけでもなく、部室の左側に見える校舎に手を振っていた。

「おい、真波。何してんだ、宇宙人でもいたかァ?」

「あ、荒北さん。ほら、待ってますよ」

「ハァ?」

真波が上を指差した先には、手を振っている咲々ちゃんがいた。まだ、帰っていなかったらしい。

「咲々先輩と図書館で補習してたんです。あそこからだと部室が見えるんで」

「何で、部室を見る必要があんだよ?」

「咲々先輩が、喜ぶかなって。そしたら、荒北さんが部活終わるまで待ってるから丁度良いって言ってました」

「・・・ふうん」

「じゃあ、俺はこれで。お疲れ様でした」

真波はもう一度咲々ちゃんに手を振り、部室に入っていった。俺は携帯電話を取りだし、咲々ちゃんにかける。

「今、迎えに行く」

『待ってるね』

電話を切り、図書館へ向かう。途中、先程までの自分を思い出し、急に恥ずかしくなる。気にくわない、なんて思ってたくせに、咲々ちゃんの一言で、こんなにも気持ちが変わるなんて。

「馬鹿か、俺・・・」


07:恋愛



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2014/07/05 宙


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