関係ないってわかってる。私はついこの前から話すようになったクラスメイトで、ずっと一緒にいた仲間でもない。関係ないやつは引っ込んでろって言われたとしても仕方ないけれど、わかっていることを、本人の口から聞くのはやっぱり少しキツかった。「北見さんには関係ない」と東峰君は私に言った。私は言い返す事が出来なくて、カッコ悪い捨てぜりふを吐いて逃げ出した。そして謝ることも、話しかけることも出来ずに、たまにこっそりと東峰君を盗み見る。

「アサヒさんが戻って来ないと、2、3年生が元気ないから!!」

昼休み、昨日教室に来ていたあの一年生二人が東峰君と話していた。私は声が聞こえるギリギリの位置で、盗み聞きをする。趣味悪いなぁ、と一人でため息をついて、教室の外を見る。

「・・・っ!」

東峰君が、寂しそうな、悔しそうな表情をしていた。そんな表情をするくせに、何で諦めたような事を言うの。本当は、バレーがしたいくせに。

「円?そんなことでなにしてんの?」

「え、あっ!」

急に友人に話しかけられ戸惑う。ヤバイ、と東峰君のほうを見るとバッチリと目が合った。盗み聞きしていたのがばれてしまったか。私は友人に何でもない、と笑い、教室の真ん中に戻った。そして、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「北見さん」

「はい?あっ、東峰君!」

授業後、東峰君が私に話しかける。私は昨日のことを思い出して固まった。関係ない、と言われその通りなのにいっちょまえに傷付いて、怒りと勢いで「へなちょこ」なんて失礼なことを言ってしまった。嫌われただろうか、と少し怖くて東峰君と目を合わせられない。それに、昼間の盗み聞きのことも。

「よかったら、一緒に帰らない・・・?」

「え?」

「いや、その!嫌だったらいいんだけど」

「・・・怒ってないの?」

私がそう聞くと、東峰君は首を傾げる。昨日の、と言うと東峰君はあぁ、と言って笑った。

「怒ってないよ、その通りだしな」

「・・・」

「あ、否定はしてくれないんだね・・・」

「・・・っ」

「え、え?北見さん!?なんっ、な、」

ホッとしたからか、私の目には涙が溢れた。ぼろ、と我慢して貯めていた涙が零れる。拭っても拭っても、涙が止まらなかった。

「あー、東峰が円泣かせてるー!」

「えっ、ちが、いや違わないのかっ!?」

「東峰、何したのよー」

「俺は、その!」

女子に囲まれわたわたと焦る東峰君が可笑しくて、私は泣きながら吹き出した。それから東峰君の手を引っ張って、帰ろう、と教室から出る。東峰君が戸惑った声で私の名前を呼ぶ。

「ごめん!安心しちゃって」

「安心?」

「昨日あんなこと言ったし、勝手な事もいっぱい言ったから・・・嫌われてないかなって」

「き、嫌わないよ!」

東峰君がすぐに否定する。私はありがとう、と笑って握っていた東峰君の手にぎゅっと力を入れる。東峰君はハッとして、真っ赤になった。

「・・・あの、北見さん」

「あ、体育館!ボールの音が聞こえるよ!」

「あ、うん・・・」

「・・・何か言いかけてた?」

首を傾げ東峰君にそう聞くと、東峰君は真っ赤な顔のまま首を横に振った。


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2014/05/13 宙


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