目を惹くの 教室でも、廊下でも体育館でだって、あの真っ赤な頭は目立つ。他の男子より身長は低いけど、あの頭のおかげで彼を見つけられないことなどない。 「鳴子君、みっけ」 隣のクラスと合同の体育。グラウンドでサッカーをしている男子の中に、人一倍張り切っている真っ赤な頭を見つけた。シュート、と思ったら思いっきりキーパーのど真ん中にボールが向かっていって、笑ってしまった。 「何見てんの?」 「鳴子君」 「へぇ、あんた鳴子君が好きなの?」 「・・・好き?」 友人に「違うの?」と聞かれ首を傾げた。見てしまうのは、何となく。目立つから、かもしれない。鳴子君とは同じクラスだが、特別仲が良いわけでもないし悪いわけでもない。少し話す程度のクラスメイトだ。 「なんか、目がいっちゃうの」 「それって、好きと違うの?」 「わかんない」 「好きだから、見ちゃうんじゃないの?」 「んー?」 友人と話しているうちにサッカーの試合は終わったらしく、鳴子君は他の男子とハイタッチをしていた。どうやら鳴子君のチームが勝ったようだった。鳴子君の嬉しそうに喜ぶ声が、こっちまで聞こえてくる。 「みょうじさん、ワイに何か用やったんか?」 「へ?」 体育が終わり、教室に戻り次の授業の準備をしていると、鳴子君が私に話しかける。なんのことかわからなくて、首を傾げると、鳴子君は照れ臭そうに頬を指でかく。 「あー・・・勘違いかもしれへんけど、みょうじさん、ワイのこと見てるやろ?」 「・・・え」 「なんちゅーか、視線感じて、振り向くとみょうじさんがおんねん」 「・・・」 気付かれていたなんて。私はただ口を開けたまま、何か言わなきゃ、と思うばかりで言葉が出てこない。 「あ、えっと、その」 「も、もしかしてやけど・・・」 「鳴子君、目立つから、目がいっちゃうっていうか、その」 「え、あ・・・まぁな!ワイは何してもかっちょよくて目立ってまうからなぁー!はは、は・・・」 「鳴子君?」 急に鳴子君が黙り混む。どうしたの、と聞くと私の顔を見て、照れたように笑った。こんな顔もするんだな、なんて、少しときめいてしまった。 「・・・ちょっと勘違いしてしもた」 「勘違い?」 「みょうじさん、ワイのこと好きなんかなーってな!」 「す!」 「カッカッカ!」 先ほどの友人との会話を思い出す。本人に言われて、顔が熱くなる。鳴子君は笑って冗談っぽく話しているけれど、そんなふうに思われていたと知ってしまうと、意識してしまう。 「・・・好きか、わかんないけど」 「お?」 「鳴子君ばっかり見ちゃうのは、勘違いじゃないよ」 「・・・曖昧やな」 ぺし、と鳴子君は私の頭を叩く。それからぐしゃぐしゃと撫でて、笑う。 「よっしゃ!ほな、これからも、ワイのこと見とけよ!」 「え」 「惚れさしたるわ!」 ぐっと顔を近付けて鳴子君は私にそう言った。鳴子君の顔をみながら、もう遅いかもしれない、と私は心の中で呟いた。 end ----- 鳴子君かっこいいっす。 2014/06/29 宙 |