Happy birthday!

「巻島君、誕生日おめでとう!」

「・・・それ、巻島に言えよ」

同じクラスの田所っちに向かって巻島君に伝えたいはずの「おめでとう」を全開の笑顔で言う。田所っちはため息をつきながら特製のサンドイッチを一口食べた。部活前のカロリー補給、と言っていたが、食べ過ぎじゃないんだろうか。自転車はカロリー消費が激しいって言っていたけれど。

「本人に言えたら田所っちで練習なんかしないよ!」

「勝手に練習相手にすんな!」

「だって!巻島君を目の前にしたら、私、緊張で何も言えない!」

「知らねぇよ!」

田所っち経由で何となく知り合いになった巻島君に、いつの間にか恋をしてしまった。彼の誕生日が今日だと知り、プレゼントまで買ったは良いが、中々巻島君に話しかけられない。そもそも、巻島君と二人で話したことがない。巻島君と話す時はいつも田所っちがいて、田所っちと巻島君が話している所に私が割って入っているだけだ。実は田所っちがいないと、まともに巻島君と話せない。

「田所っちが私のキューピッドなんだからー」

「そんなもんなった覚えねぇよ!」

「いいじゃんいいじゃんー!」

助けて田所っち!と田所っちの腕にしがみつく。嫌だ、なんて全く冷たいやつだ。田所っちの腕にしがみついたままため息をつき、机に置いた巻島君へのプレゼントを見つめる。このままだと、このプレゼントも無駄になってしまう。渡せなかったら、このプレゼントはずっと私の机の中にしまったままになるのだろう。そんなの、嫌だ。

「お、巻島」

「え」

「巻島ぁ!」

「ちょ、田所っち!待って!ちょっ・・・」

教室から田所っちが廊下を通る巻島君を見つけ、大きな声で呼び止める。田所っちは机に置いたプレゼントを掴み、私を連れたまま廊下に出て、巻島君の前に私をつき出す。そしてそのまま「じゃあな」と言ってプレゼントを私に渡し、サンドイッチを食べながら私と巻島君に背を向けて廊下を歩いていった。どうやら部活に向かったらしい。というか、この状況をどうしろと。巻島君は意味がわからない、といった表情で私と田所っちの背中を交互に見ている。

「えっと・・・どういう状況っショ、これ」

「あ、その、田所っちは・・・私のキューピッドになってくれたらしく」

「え?」

「ま、巻島君」

プレゼントを両手で差し出し、巻島君に向き合う。顔が熱い。きっと真っ赤になっているに違いない。けれど、真っ直ぐ巻島君を見て、伝えるんだ。

「誕生日、おめでとう!」


Happy Birthday!



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巻ちゃんおめでとう!!!!


2014/07/07 宙

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