マーガレットの花占い

練習後、部室に戻ると部室前の雑草に紛れて白い花が咲いていた。何の花だったか、パッと名前が出てこない。何となく、あの子に似ているな、と思った。白くて、小さくて、いつも雑草に囲まれて、その中でも目立っている。それを摘み取り指で遊ぶ。しゃがみこんでブチブチとその花弁をむしる。目立つ、と言っても自分の中だけだ。クラスの中ではむしろ目立たない方かもしれない。それが腹立だしい。自分の中であの子がそんな存在でいるなんて、あり得ない事だ。

「御堂筋君」

「何や・・・なまえちゃん」

「部室入らへんの?練習、終わったんやろ?」

少し高めの声が後ろから降ってくる。うるさい、と心の中で呟いて、花弁をむしり続けた。こんなふうに、ボクの中からも散っていけばいい。

「なんや、花占い?」

「はぁ?」

「だって、そうやろ。御堂筋君も可愛い事するんやなぁ」

ボクの横にしゃがんで地面に落ちた花弁を拾う。好きな人いるの?と笑いながら。なんやそれ、勘違いも甚だしいわ。

「マーガレットなんて何でこんなとこに咲いてるんやろね?」

そうだ、花の名前、マーガレットだ。もう花弁がほとんどなく何の花だったかなんてわからなくなっている。ブチ、とまた一つ、花弁をむしる。最後の一枚を地面に落とすと、何が面白いのか隣からクスクスと笑い声が聞こえた。

「なんや、キモォ」

「だって、その顔は結果が悪かった、て顔やもん」

「・・・結果ァ?」

花占い、となまえちゃんが地面を指差す。まだ勘違いをしている。説明するのもめんどくさい。

「・・・御堂筋君、好きな人いるんやなぁ」

「・・・ちゃう」

「残念やなぁ」

「・・・」

なまえちゃんが立ち上がり、部室に入って行った。なんやそれ、残念て、何がやの。花弁がなくなったマーガレットを片手に立ち上がり、なまえちゃんが入って行った部室のドアを見つめる。

「・・・枯れてしまえばええんや」

花弁が無くなっても、彼女はボクの中から消えない。それどころか、さらに膨らむ。出ていけ、と花弁の無くなったマーガレットを投げ捨てた。


end
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よくわからない。


2014/06/04 宙

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テーマ「人外ファンタジー」
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