ヤキモチの話 昼休み、友人とお弁当を食べた後、飲み物を買おうと通りかかった自販機の前で財布から小銭を出していると、自販機の後ろから声が聞こえた。「好きです」ちょっと待って、こんなところで告白ですか?校舎の角にある自販機から顔を覗かせると、男の子と女の子が見えた。 (あ・・・菅原だ) 告白されているのは同じクラスの菅原孝支だった。照れ臭そうに頬を指でかいている。あ、ヤバい、目があった。今さら隠れても遅いけれど、私は飲み物を買うのも忘れてその場から逃げるように去った。菅原は、女子に人気がある。かっこいいし、優しいし。私も、そんな女子の中の一人だ。でも少し、特別。 「なまえ」 「あ、す、菅原」 「なーに逃げてんの」 「いや、だって・・・気まずいじゃん」 どうやら追いかけてきたらしい。菅原は唇を尖らせ不満そうな顔をする。もう、と何だか怒っているのかそうでないのか。 「彼氏が告白されてるんだから、ちょっとはヤキモチ妬こうよ」 「や、妬いてるよ」 嘘だ、と菅原が即否定した。いや、嘘ではない。本当に結構妬いている。ただそれを表に出すやり方がわからないだけで。 「まぁ、信頼されてるってことかな・・・あ、はい、これ」 「え」 「さっき、飲み物買いに来たんだろ?買ってなかったみたいだから」 「あ、ありがとう」 手渡されたのは私の好きなジュースだった。にっこりと笑って好きだろ、と言う菅原に胸がきゅんとした。菅原のこういう然り気無いところが好き。大好き。 「菅原」 「ん?」 「一応、聞くけど・・・断ったよね?」 「・・・」 「あ、あれ?菅原!?」 「ん、あ、違う違う!」 沈黙に不安になり焦る私に、菅原はブンブンと手を振った。違うよ、と何度も言って。 「本当に、妬いてくれたんだなって」 「・・・だ、だから本当だって」 「うん、ごめん・・・好き、なまえ」 菅原が私を抱き締める。ここ廊下だよ、と言ってもうん、と頷くだけで話してくれない。私は諦めて菅原の腕をぎゅっと掴んだ。 「断ったよ、ちゃんと。彼女がいるって」 「うん、ありがとう・・・」 「・・・ごめん、すぐ済むから」 「え?」 菅原の唇が私の唇に軽く触れる。私は真っ赤になって「廊下だってば」と菅原を押した。ごめん、と笑う菅原に「もう一回」と言われ、断れなくて私達はもう一度キスをした。 end ---- 2014/05/28 宙 |