#笑えない

昼休み、彼氏のところに行く、と満面の笑みで教室を出ていった友人は、目を腫らして戻ってきた。どうしたの、と他の友人が彼女に聞くと、彼女は涙を流して「フラレた」と呟いた。理由もなく、ただ別れようと言われたらしい。バイバイ、と。その話を聞きながら、私は、気づかれないように笑った。

「何で?待宮君と昨日もデートしたんじゃろ?」

「うん・・・」

別れた、別れた、別れた別れた!沸き上がる感情を抑えながら私は心の中で歓喜した。次は、私が。友人には裏切りだろうと卑怯だろうと何を言われてもいい。待宮栄吉と、私が結ばれればそれでいい。話を聞けば大した理由もなく別れたようだし、きっと友人に飽きて切ったのだ。

「待宮君ヒドイね・・・どこにいる?私が理由問いただしてこようか」

「なまえ・・・ありがとう・・・」

あぁ、もう。笑いが、止まらない。友人に言われた場所は体育館の裏だった。今も待宮君がいるかわからない、と言っていたが、私はそこに向かった。もちろん、友人に言った通り待宮君に友人を振った理由を聞くわけではない。それはそれで面白そうだが、今は私と待宮君とのことを考えよう。どうやって話しかけようか。どうやって好きになってもらおうか。

「あ・・・まち、」

彼の姿を見つけ、声をかけようとして近づく。でも、声を掛けられなかった。何で、そんな辛そうな顔をしてるの?何で、そんなところでしゃがみこんでいるの?ジャリ、と私の靴が砂を擦る音がした。待宮君はハッとして振り返る。一瞬、泣いているのかと思った。

「なまえちゃんか・・・」

「あ・・・」

「聞いたんか。わしの事」

「別れたって・・・佳奈、泣いて」

まさか、まさかまさか。最悪の展開が私の頭に出来上がる。違う、違う。待宮君は、友人に飽きて、だから、

「理由が、あるの?」

言わないで。理由なんかないって、言って。

「わしは、インハイに集中せんといかん」

「・・・!」

「なまえちゃんには、いつも全部お見通しじゃ」

そんなことない。私は、下唇を噛んだ。私は、そんなこと微塵も考えなかった。

「待宮君は・・・」

「わし、エースじゃからの」

「何で、理由も言わないで」

「後腐れ残すんは、傷付くからのう」

待宮君が軽く笑う。無理矢理笑っている。きっとしばらくすれば友人も、待宮君も傷は癒えるだろう。きっとまた笑い合える。

「インハイで優勝したら、また告白するわ」

私は、笑えそうもない。

「なまえちゃんが泣くことないじゃろ」

バチが、当たったんだ。

「ごめん、ごめん・・・ごめん」

泣きながら謝り続ける私に待宮君は笑いながら頭を撫でてくれた。私にはそんなことしてもらう価値なんか、ないのに。


end
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完全自己満足。思い付きで突っ走った結果。


2014/05/28 宙

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