それは甘過ぎて

「なまえちゃん、俺の事好きィ?」

「好き、です」

耳元で囁かれドキドキしながらそう答えると、私を背後から抱き締めている荒北さんが満足そうに笑った。私のセミロングの髪の毛を左右に分けて、首にキスを落とす。一つ、二つ。三つ目で強く吸われて、鬱血してるんだろうな、なんてボーッとした頭で考えていると、着ていたワンピースの背中のジッパーが下ろされた。荒北さん、と焦って呼ぶと、ひどく甘い声でなァに?とまた耳元で囁かれた。荒北さんの手が背中に触れ、私はその手が少し冷たくて震える。する、と荒北さんの手が滑り、止まった。

「怖い?」

「あ、その・・・荒北さんの手が、冷たくて」

「・・・あぁ、ごめんネ」

そう言いながら荒北さんは手を背中から肩に滑らせ、私のワンピースを脱がせる。肩から落ちるワンピースが、腕に引っ掛かり止まる。後ろから片腕をとられ、ホックを外された下着と一緒に下ろされた。もう一度荒北さん、と呼ぶと私の顔を覗き込むようにしてこちらを向いた。

「あの、寒いですね?」

「それ今言うこと?」

「だって、なんか、その」

「大丈夫、すぐ暑くなるから」

ほら、と頬に手を添えられ、少し強引に引き寄せられた。いつもするキスとは違う、貪るようなキス。こんなキス知らない、と驚きながらも荒北さんの絡まる舌に応える。静かな部屋の中に唾液の混じりあう水音が響いて、実感してしまう。キスをしながら私の体を触る荒北さんの手が、気持ちよくて仕方ない。

「・・・っ、はぁ」

「暑い?」

「はい・・・」

「俺も」

私をベッドに倒して、馬乗りになりながら荒北さんは着ていたTシャツを脱いだ。荒北さんに触れたくて恐る恐る手を伸ばす。私の手に気づいた荒北さんが、触りたいの?と笑みを浮かべて首を傾げた。無言で頷けば荒北さんが私の手をとって、自分の体にくっつける。

「ドーゾ」

「わ・・・」

「なまえちゃん、手アッチィ」

「あ、ごめんなさいっ」

「んー、いいよ、好きなだけ触ればァ」

唇の端を上げて荒北さんが笑う。その表情が好き。少し意地悪そうなその表情に私の奥のほうがきゅんとする。

「俺も、触るけどネ」

触る、と言うより鎖骨辺りをべろ、と舐められた。驚き体を強張らせると、可愛い、と頬を撫でられる。

「あ、荒北さん」

砂糖たっぷりのミルクみたいに甘くてドロドロ。普段の荒北さんを見ているから尚更感じる。荒北さんは、いつも私に甘い。

「好きだぜ、なまえちゃん」

あぁ、でも目に宿るのは、やっぱり野獣。きっと言葉なんて紡げなくなる。だから、今伝えておこう。めいいっぱいの、愛を。

「私も、大好きです」


end
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甘い荒北


2014/05/21 宙

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