八つ当たり 「巻島君の髪の毛、サラサラ」 そう言いながら後ろの席のみょうじは俺の髪を触る。毛先の方を、撫でながらくるくると指に巻いて遊んでいるのだ。小さな声でいいなぁ、と言って仕舞いには髪の毛をぎゅっと握り引っ張ってくる。もちろん後ろに退けぞってしまう俺は、みょうじに文句を言いながら振り向く。 「痛いっショ!」 「あはは、ごめん」 「絶対思ってないショ・・・」 ため息をつくとみょうじは巻島君の髪が綺麗すぎて憎たらしくなるの、と笑顔で言った。顔に似合わず中々口が悪いし腹黒い。みょうじの髪は癖っ毛で、いつもどこかがはねている。今日は右肩にかかる髪が外側にピン、とはねていた。雨の日は特にひどい。前髪も横髪もはねてしまって、みょうじは大体不機嫌だ。その日は前の席に座る俺の髪をぐいぐいと引っ張って八つ当たりしている。 「いいなぁ、真っ直ぐにストン、てなってるしサラサラだし。巻島君シャンプー何使ってるの」 「別に、普通の」 「えー、お金持ちさんは高級な、特別なシャンプー使ってるんでしょ?だからそんなにサラサラなんだ!」 「決めつけるなっショ・・・」 頬を膨らませながら自分の髪の毛を触るみょうじ。癖毛だから朝時間がかかるとか、枝毛が減らないだとか、ぶつぶつ文句ばかりだ。 「そんなに気になるなら切ればいいだろ」 「え」 「短くすりゃ癖毛も気にならないっショ?」 指でハサミを作りチョキチョキと動かす。俺の提案にみょうじは目を伏せて、だって、と呟いた。 「気にならなくなったら、巻島君に八つ当たり出来なくなるじゃない・・・せっかく、巻島君に触れられるのに」 「・・・八つ当たりすんなっショ」 真っ赤になりながら唇を尖らせ言うみょうじに、そんなことを言いながらも、ちょっとときめいてしまった。 end ---- 巻ちゃん! 2014/05/18 宙 |