告白 「山口君!」 放課後、掃除当番だった私は同じ班の山口忠君に勇気を振り絞って声をかけた。彼はバレー部に入っている為、掃除が終わったらすぐに部活に行ってしまう。今しかない、と箒の柄をぎゅっと握ってありったけの勇気で。 「何?」 「あの、その」 「あ、もしかしてごみ捨て手伝って欲しいとか?」 山口君はひょい、と体を横にずらして私の後ろにあるごみ袋を見る。確かにこれは私が運ばなくちゃいけないんだけど、手伝ってもらうほどの量じゃない。予想外の申し出に私はわたわたと焦ってしまう。 「なまえさんて力無さそうだもんね、一個づつ持とうか」 「えっ、あ・・・ありがとう」 「いいよー。ちょっと待ってね、俺そのまま部活行くから」 山口君が自分の鞄を持ち、それからごみ袋を持った。私ももう一つのごみ袋を持ち、山口君の横に並ぶ。ごみ捨て場までほんの数分。それまでに言わなければ。 「あのっ、山口君」 「あ、ツッキー!俺ごみ捨て行くから、そのまま体育館行くねー!」 「あぁ、うん。わかった」 山口君が友人の月島蛍君にそう言って手を振る。月島君がちら、と私の方を見て、薄く笑った。あれ、もしかしてばれているんだろうか。 「あ、ごめん。何か言いかけた?」 「いやっ、その、ば、バレー部楽しい!?」 「え?うん、練習はキツイ時もあるけど、楽しいよ」 とっさにそんな質問をしてしまい、私は心の中でため息をついた。違う、言いたいことはこんなことじゃない。私がまごついている間にもうごみ捨て場まで来てしまい、ごみ袋を指定の場所に捨てる。山口君は時計を確認して、じゃあ、と私に手を振った。駄目だ、このままじゃ山口君が行ってしまう。 「山口君!」 「どうしたの?」 「・・・っ、好きです!」 山口君に向かって大きな声でそう言った。山口君はその場に固まったように立ち尽くして、ずる、と鞄が肩からずり落ちる。そして、真っ赤に染まった。 end ---- 山口!好きです! 2014/05/12 宙 |